COLUMN

コラム

税務調査への対応策

「人件費」の設定で注意しておきたいポイント⑥「役員報酬」の決め方

今回も、税務処理上でよく争われる人件費に関わるお話です。

◎株主総会で役員報酬を決める際の注意点

税務調査では、株主総会の議事録などがチェックされることも多いということはご存知でしょうか。
とくに、役員報酬がどのように決定されているかが重要視されています。

議事録は会社法にしたがって作成するもの。
会社法361条には、役員報酬について次のように定められています。

●役員報酬につき、次の事項を定款に定めていないときは、株主総会の決議で決める。
 ①役員報酬の額
 ②役員報酬のうち金銭でないものはその具体的な内容

多くの会社では、役員報酬は株主総会などで決定し、随時変更できるようにしています。
ただし、役員報酬の額だけは決めているが、②の金銭でない経済的利益を決めていない会社も多いのです。
法人税法でも、金銭だけではなく、毎月一定額ある経済的利益も役員報酬として認めています。

ですから、株主総会で役員報酬を決める場合は、金銭の額だけではなく、経済的利益も含めて記載しておく必要があります。
また、税務調査によって想定外の経済的利益が見つかるケースもありますが、議事録で「金銭+経済的利益」を役員報酬としておけば、法人税の否認をされることがないことも知っておくとよいでしょう。

たとえば、株主総会の議事録には、次のような内容を盛り込んでおくことをお勧めします。

〈役員報酬について議事録に記載しておきたいこと(一部)〉
●物品その他の資産を贈与した場合における資産の価額に相当する金額
●所有資産を低い価額で譲渡した場合における資産の価額と譲渡価額との差に相当する金額
●居住用に供する土地または家屋を無償または低い価額で提供した場合における、通常取得するべき賃貸料の額と実際に徴収した賃貸料の額との差額に相当する金額
●機密費、接待費、交際費、旅費などの名義で支給したもののうち、その法人の業務のために使用したことが明らかでないもの
●その他

なお会社法では、役員報酬のうち金銭でないものについて、その具体的な内容を定款または株主総会で決議することとと書かれています。
すると税務調査を考えた場合、役員報酬のうち金銭だけを定めた議事録は、「リスクを含んだ議事録」となります。
決めるべきことを決めている証としての議事録をしっかり作成し、何かあった場合に備えておくことが必要なのです。

管理や議事録の確認は、税務調査対策の中でも重要なことの一つです。
税務調査が実施される前、普段から顧問税理士と連携しておくと、上記の内容を漏らさず不意の調査に臨むこともできるでしょう。
ただし、税理士の税務調査対応は経験がものを言います。

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※記事に含まれる法令等の情報は、記事作成時点のものとなります。法令等は随時変わる可能性がありますので、本記事を実務に生かされる際には最寄の税務署か税理士へ確認してください。