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税務調査への対応策

「人件費」の設定で注意しておきたいポイント④「役員退職金」

今回も、人件費に関わる注意点を、実際にあった事例でご紹介します。

◎特殊事情がある役員退職金を明確にするには

ある会社の創業社長が自社ビルでの作業中の事故により死亡しました。
会社側は、社長に対し、役員退職金として9,100万円を支払いましたが、税務調査により、「過大役員退職金」と否認され、争うことに。

この事例、会社側は「退職に至った特殊な事情も考慮しての役員退職金は適正である」と主張しましたが、税務署は次のように反論してきました。

〈税務署からの反論〉
●会社と同地域における同業他社の役員退職金を調査したところ、功績倍率は、最高3.18、最低1.30だった(平均2.30)
●役員退職金規定に定める掛け率で役員退職金は次の計算式で計算される
 最終役員報酬月額×在任年数×功績倍率
●今回の最終報酬月額は50万円だったので、
 50万円×11年×2.30=1,265万円が適正額であると主張

これに対し、裁判所は次のような判断を下しました。

〈裁判所の判断〉
●抽出した同業他社のデータ数が少ない
●功績倍率の最高値と最低値に開きがある
●最高値と平均値の差が少なく、功績倍率の平均値を超えれば過大とするのは合理的ではない
●創業社長であることは考慮するべきである
●弔慰金のうち、最終役員報酬月額の3年分(1,800万円)は相続税においても課税されないという考え方からも妥当である
●役員退職金の適正額は3,650万円
 退職金 50万円×11年×3.18=1,750万円
 弔慰金1,800万円
 葬儀費用負担金100万円

この結果、役員退職金9,100万円のうちの約半分以上が否認されることになりました。
なお、この会社の取引や経理処理には経済合理性があり、この否認はおかしいという見方はできます。
どうしても納得できない場合は、高裁まで争うべきという意見もみられます。
というのも、地裁で負けても高裁で勝って確定する訴訟もあるし、100%納税者の主張が認められなくても、この事例のように争いが進むにつれ、納税者に有利な判決が出てくる可能性もあるからです。

費用対効果、労力や時間などの問題も考慮し、できるかぎり争いを避けるためにも、会社として役員の退職の準備を万全にしておくことが重要です。
本件に限りませんが、以下の3点は常に意識しておくようにしてくださいね。

 ●税務調査で否認されないように日頃の取引、処理に気を配る
 ●グレーゾーンの場合、戦える根拠を残しておく
 ●争う場合は、何が大切なことかをバランスよく考える

とは言うものの、税務調査に向けての処理を社内の経理担当者だけで進めるのは、よほどの体制が整っていなければ難しいでしょう。
税務調査対応を踏まえた基本方針は、税務調査の経験が豊富な税理士に、日頃の徹底した管理や税務調査を前提とした記帳の対応を依頼することにつきます。
実際に調査が行われることになっても安心して任せられますよね。

ただし、もしそのような顧問税理士さんがいない中で、税務調査の話がきたのでしたら、「税務調査の緊急医」という税務調査専門のサービスをご用意している当事務所にご相談ください。
税務調査経験の豊富な専門チームや、国税・税務署のOBが、的確に税務調査対応をいたします。

※記事に含まれる法令等の情報は、記事作成時点のものとなります。法令等は随時変わる可能性がありますので、本記事を実務に生かされる際には最寄の税務署か税理士へ確認してください。

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