COLUMN

コラム

税務調査への対応策

税務調査で交渉すべきこと①重加算税の対象か否か?

◎重加算税の前提「隠蔽、仮装」の立証責任はどこにある?

税務調査において、交渉すべきことのひとつが、「重加算税が課されるべきと指摘されている項目は、本当に重加算税の対象なのかどうか」です。
税務署と無用な摩擦を起こしたり、見解の相違を生じさせないためにも、これはとても大切です。

重加算税が課されるのは、隠蔽、仮装があることが前提ですが、これらがないのに、重加算税が課されているケースも多いものです。

重加算税を定めた法律(国税通則法第68条)には、次のように書かれています。

●納税者がその国税の課税標準等または税額等の計算の基礎となるべき事実の全部または一部を隠蔽し、または仮装し、その隠蔽しまたは仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは重加算税を課する

ここにあるように、隠蔽、仮装がない限り、重加算税は絶対にかかりません。
では、隠蔽、仮装とは具体的にはどういう状況をさすのでしょうか。

◎そもそも「隠蔽、仮装」とは?

●事実を隠蔽するとは、課税標準等の計算の基礎となる事実を隠匿し、あるいは、故意に脱漏することをいい、事実を仮装するとは、所得、財産あるいは取引上の名義等に関し、それが事実であるかのように装う等、故意に事実をわい曲することをいうものとされている。
(国税不服裁判所の裁決文より)

ここでのポイントは、いずれも「故意」という言葉が使われていることです。
隠したり、嘘をついたりする行為は、それをしようとする意図がなくてはできないものですよね。
つまり、故意性が必要だということです。そして、その立証責任は、「否認する側」にあります。

それにも関わらず、立証責任が果たされないまま、納税者や税理士が認めてしまったために、重加算税が課されていることも多いのです。

もう一つ、平成9年12月9日の国税不服審判所で示された裁決もご紹介しましょう。

●原処分庁(税務署、国税局)の主張は、請求人(納税者)が意識的な過少申告を行ったものであるというにすぎず、隠蔽または仮装であると評価すべき行為の存在について何らの主張・立証をしておらず、また、当審判所の調査その他本件に関する全資料をもってしても、本件貸付金について隠蔽または仮装の事実を認めることはできない。したがって、重加算税の賦課決定処分のうち、争いのある部分については重加算税を賦課することは相当ではない。

これは重加算税が課され争った結果、納税者が勝ち、重加算税を回避した事例のひとつです。
諦めずに交渉し、正当な判断を求めることが大切だということですね。

このように、税務調査で指摘された重加算税は、絶対ではなく回避することが出来ます。故意の隠蔽・仮装をしたわけではなく、結果的にそうなってしまった、絶対に悪意はなかったと言えるのであれば、後はどのように対応するか、だけです。ただ、自社にとっての正当な結論を得るために、どのように振る舞うべきかの答えはケースバイケースとなります。そこで、正当な結論を得る準備・対応に不安があれば、国税・税務署OBがサポートする、当事務所の「税務調査の緊急医」にご相談ください。豊富な「税務調査経験」から、貴社の税務調査対応をサポートします。

※記事に含まれる法令等の情報は、記事作成時点のものとなります。法令等は随時変わる可能性がありますので、本記事を実務に生かされる際には最寄の税務署か税理士へ確認してください。