COLUMN

コラム

今月のセカンドオピニオン

借金をしてアパートを建てると相続税の節税になるか?

こんにちは。税理士の黒川です。
今月は地元の社長さんからのご紹介で
ある不動産オーナーLさんにセカンドオピニオンとしてのアドバイスをしました。


【事業概要】

・業種・・・不動産貸付業(個人)    
・売上・・・約3,000万円     
・業績・・・黒字    
・従業員数・・・1名


■セカンドオピニオンの準備

Lさんは、土地を中心に不動産を数億円分お持ちです。
Lさんの土地には柿の木と、みかんの木があり、山盛りの柿とみかんをいただいてしまいました。みずみずしくて、甘くて、とてもおいしかったです。

Lさんは見た目もお元気でお若いですが、70歳という年齢のため相続税の負担を心配されています。そんな中、「借金してアパートを建てると
相続税の節税になる」という情報をお聞きになったそうです。「実際のところ、本当に節税になりますか?」とのご質問です。

■セカンドオピニオンとしてのアドバイス

【「借金をしてアパートを建てることは相続税の節税になる」は間違い?】

借金してアパートを建てると相続税の節税になるか?これは厳密に言うと間違いです。
借金をしてもしなくても、どちらでも節税になります。
アパートを建てると節税になるのです。
借金をすることと、節税になることは関係ありません。
自己資金でアパートを建てても、全く同じ節税効果があります。

節税になる理由ですが、まずは土地からご説明します。
アパートが建ってしまった土地は、自由に使える土地ではありませんので、
その分だけ価値が下がります。だいたい最初の土地の評価額から20%減くらいになります。

また、建物も土地と同じような理由があり、さらに評価基準の違いなどで価値が下がります。
こちらは劇的に評価額を下げることができ、建物の購入価額から60%減くらいになります。
土地は約20%の評価減、建物は約60%の評価減。これは大きいです。

【借金をすることの効果】

アパート建設の原資は、借金でも自己資金でも節税効果は同じです。

しかし、借金をすることによるメリットもあります。それは、自己資金をプールしつつ、アパート建設ができることです。
アパート建設で節税効果を受け、自己資金は相続税の納税資金として活用することができます。
また、不動産の購入資金の借り入れは、長期間にわたり、比較的低利で借りられます。
納税資金に不安がある場合は、借金は重宝します。

【その他の注意点】

借金をしてアパートを建てた場合、節税効果が大きいのは借入直後。
なので、この手法を使うなら、建物完成後、数年以内に相続が発生しそうな場合に限ります。

また、全く別な視点で、建物はLさん名義が良いのか?Lさんの子どもたちの名義にするのはどうか? 
法人を設立し、その法人の名義にしたほうが、相続税だけでなく所得税・法人税など合わせて、トータルでは節税ではないか? 何パターンにも分けてシミュレーションが必要です。

不動産の額が大きいだけに、いろいろと検討すべき材料がたくさんあります。
税務的な落とし穴も盛りだくさんのこの論点。難しいですが、税理士的には面白味のある仕事です。

■結果

複雑な論点ですので、図を書いたり、数字を使ったりしながらご説明しました。
Lさんは、しっかり理解できたとのこと。たくさん詰めなければならないことがあることに気づいていただきました。

お気づきになるのが、このタイミングで良かったです。
対策は早いに越したことはないですから。