COLUMN

コラム

今月のセカンドオピニオン

会社設立後の2年間の消費税は、本当に”免税”がオトク?

こんにちは。税理士の黒川です。
今月は知人の営業マンさんからのご紹介で、コンサル業J社様にセカンドオピニオンとしてのアドバイスをしました。

【会社概要】
・業種・・・コンサル業
・売上・・・約100万円(第一期目につき、まだまだ創業段階)
・業績・・・赤字
・従業員数・・・社長1名

■セカンドオピニオンの準備

知人の営業マンさんから「ぜひご紹介したい」とお声をかけていただき、J社様の社長さんとお会いしました。
お会いした場所は居酒屋。私の得意中の得意の舞台です(笑)

コンサルタントとしてのご経験を十分に積まれ、晴れて独立。昨年の秋に会社を設立され、間もなく決算だそうです。
このような起業家の方と話すのは楽しいですし、これからの事業が楽しみですね。

設立第一期目は、仕事が入ってくる仕組み作りに専念し、出て行く経費ばかり。相当に経費を使ったそうです。
そして、売上はかつて勤務していた会社から受けた仕事のみ。
第二期目からは、苦労して作った仕組みが稼働し、売上の見込は明るいようです。


■セカンドオピニオンとしてのアドバイス

第一期目は赤字。詳しくお聞きすると、相当な赤字です。これだけの経費を使うとは、器の大きさを感じさせます。
そこで税金の話をしました。赤字なので、法人税等はどうしてもかかってしまう70,000円のみ。
消費税は第一期目なので納税義務は無し。こちらも納めなくていい。(これを「免税」と言います)

ただし、消費税は還付を受けられる可能性をお話ししました。消費税が還付と言うことに、「?」な状態のようでしたので、ご説明しました。
消費税の納税額は単純明快、下記の算式で計算します。(厳密に言うと、もう少し複雑ですが、簡略化してお伝えしました)

  売上額の5%-人件費以外の経費の額の5%=納税額

ですので、普通に事業をしていると、「売上の5%」の方が「人件費以外の経費の5%」より大きくなります。これらの差額を納税します。
ですが、J社様の場合、第一期目は出て行く経費ばかりだったとのこと。売上は約100万円ですが、人件費以外の経費は約900万円もあったそう
です。この場合、上記の算式に当てはめると、下記のようになります。

  売上額の5%-人件費以外の経費の額の5%=100万円×5%-900万円×5%=38万円

この金額だけ還付を受けられます。
しかし、「やった!還付だ!」と思いきや、還付を選ぶと第二期目の免税は無しになります。
ですので、第一期目が還付だとしても、第二期目の消費税額とトータルで考えなければなりません。

第一期目が還付でも、第二期目で大幅な納税になりそうなら、最初の2年間は免税を選んでおいた方がいい。
ただし、資金繰りの関係で、とりあえず還付資金が欲しい場合は還付を選択するのもアリです。
設立当初は使える融資制度が少なく、少額の還付金でも貴重な場合がありますからね。


■結果

社長は、「知らなかった!ぜひ還付金が欲しい」とのこと。還付申告をするそうです。

セカンドオピニオンの経験上、この消費税について、最初の2年間は免税と決めてかかる税理士が多いです。
第一期目と第二期目のトータルの消費税額をシミュレーションするのは意外に少数派です。
しっかりシミュレーションし、かつ、会社の実情に合わせた資金繰りも加味してアドバイスするのが正しいと思います。