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コラム
たとえば、自社ビルの屋根の雨漏り防止のために工事をしたいが、見積もりをとったら1500万円超かかるといわれた、これは修繕費として経費にしてもいいのかどうか、といったご相談をいただくことがあります。
多額の修繕をした場合、修繕費として経費にしていいのか、あるいは固定資産に計上して減価償却を通じて経費にするべきなのか。
これは節税にも関わってくる重要なポイントです。
これに関しては、多額の修繕費用をかけても修繕費として認められ、納税者が勝った事例がありますので、ご紹介したいと思います。
〈前提条件〉
●建物A
雨漏りが20カ所以上あり、毎月水漏れ防止剤で修理した
修繕費は1370万円
●建物B
何回も防水塗装などを行ったが雨漏りが続いた
陸屋根(屋上が平らな屋根)のため、雨漏りの箇所が特定できない
修繕費は1100万円
●建物C
平成2年、ビニール防水工事を行ったが、再度雨漏りが始まった
陸屋根のため雨漏りの箇所が特定できない
修繕費は2150万円
〈納税者側の主張〉
●建物A
本社の屋根が20カ所以上雨漏りしていた
営業を休止できないので、ふき替え工事をせず、カラートタンでカバーし修繕しただけなので、修繕費になる
●建物B、C
陸屋根のため雨漏りの箇所が特定できない
全面的な工事でなければ雨漏りを防ぐことができない
そのため、陸屋根に鉄骨を組み、アルミトタンでカバー、修繕しただけなので修繕費になる
〈税務署側の主張〉
修繕費とは、通常の維持管理の費用、または、原状回復費用のことをいい、これらはどちらにも該当しないので、固定資産に計上するべきである
以上の主張に対し、国税不服審判所は次のように判断しました。
〈国税不服審判所の判断〉
●建物A
本社の屋根は耐用年数の到来が近い
屋根をカバーする工事=新しい屋根をつくる工事となる
1370万円の全額を固定資産として計上するべきである。
●建物B、C
この工事をやらないと雨漏りによる損害が出る、建物の維持管理のために必要な費用と判断できる
建物の耐用年数を延長させるものではなく、建物の価値が増えるわけでもないので、1100万円、2150万円は修繕費でよい
この判断を分けているのは、次の4点です。
①通常の維持管理の費用→修繕費
②原状回復のための費用→修繕費
③耐用年数が延長される→固定資産
④固定資産の価値が増える→固定資産
以上のことから、金額の大小ではなく、同じような工事でも判断が分かれることがあるということが、おわかりいただけるかと思います。
実際には判断が難しいケースもありますが、修繕費でよいものまで固定資産に計上することは、節税にならないということを覚えておきましょう。
※記事に含まれる法令等の情報は、記事作成時点のものとなります。法令等は随時変わる可能性がありますので、本記事を実務に生かされる際には最寄の税務署か税理士へ確認してください。