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税務調査への対応策

これは大丈夫?これはNG?節税と否認リスクについて③貸倒損失

顧問先の決算書を見たとき、とっくに回収できないことになっていた債権が、貸借対照表に載っているというケースがしばしばあります。
この場合、問題になるのは、その貸倒損失の計上時期です。
これについて、納税者が負けた事例があるので紹介したいと思います。

◎貸倒損失の計上時期~必ずその期に計上する

〈前提条件〉
●納税者の得意先A社が破産宣告を受けた(平成9年)
●納税者は売掛債権を破産債権届出書に記載し提出した
●最後配当を受領(平成11年)
●平成11年6月、破産終結(登記簿謄本閉鎖)
●これ以降、法的な回収手続きを行っていない
●平成17年頃、顧問税理士から問い合わせ→A社の代表者Bが所在不明
●納税者の取締役会(平成17年9月)で、同日、A社への債権が回収不能になったとし、貸倒れが承認される
●平成17年9月期において、貸倒損失として計上し、否認された

この事例で争点となったのは、
「全額が回収できないことが明らかになった事業年度はいつか」
ということです。

法人の破産手続きにおいて、配当されなかった部分の破産債権を法的に消滅させる免責手続はありません。
したがって、国税不服審判所は、次のような判断を行い、税務署の主張を認めました。
●破産の手続により債権額が法律的に切り捨てられるとはいえないので、納税者がもつA社に対する売掛債権は、A社が破産した後も引き続き存在していると考えられる。
●しかし、破産した法人は、消滅した時点で分配可能な財産はないので、その時点において貸倒れにするべきである。

これについては、経営者から「赤字になるので貸倒れにできない」と要請があったのか、あるいは、単なるチェック不足により、売掛債権の状況を決算時に確認しなかったのか、いくつかの理由が考えられますが、ただひとついえるのは、その判断が間違っていたということです。

法人税基本通達9-6-1には、
「その事実の発生した日の属する事業年度において、貸倒れとして損金の額に算入する」と記載されています。
ここで間違えないでいただきたいのは、「算入できる」ではなく、「算入する」となっていること。
ですから、必ずその期の損金とする必要があるのです。
事例では、破産が終結した平成11年6月の属する事業年度において、貸倒れにするべきだったということです。

税務調査では、「どの時点での経費なのか」は重要な論点となりますので、とくに貸倒損失の場合、処理しないまま時間がすぎると、経費になる機会を失うというリスクになるので、十分注意してくださいね。

※記事に含まれる法令等の情報は、記事作成時点のものとなります。法令等は随時変わる可能性がありますので、本記事を実務に生かされる際には最寄の税務署か税理士へ確認してください。