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税務調査対応の基礎知識

有価証券の譲渡損益の計上でよくある質問と答え

今回は有価証券の譲渡損益に関してよくある質問と答えをご紹介します。

「損金」と「簿価」について

まず質問をご紹介する前に、初心者の方のためにも今回のキーワードとなる「損金」と「簿価」について紹介します。

◆損金とは
損金は、資本などの取引以外でその法人の資産の減少をきたす原価や費用、損失を指します。

◆簿価とは
簿価は帳簿価格の略で、法人が対象を取得した時の金額や支出した金額を指します。

「損金」と「簿価」に関するQ&A

これらのことを踏まえた上でよくある質問をご紹介しましょう。

質問
『A社が、会社の有価証券勘定に計上していた自己株式を処分するとします。そして自社の株式をB社に90万円の売価で譲渡しましたが、簿価は100万円でした。この場合は譲渡した際の損(譲渡損)として損金に計上できるのでしょうか?』

答え
『結論から言うと、損金計上はできません。』

根拠は以下のようになります。
平成18年度の法人法改正によって、自己株式の譲渡をした場合には、その対価のうち資本金としなかった金額を資本金等の金額とするとなりました(*一部の場合を除く)。また、有価証券は「証券取引法第2条第1項(定義)に規定する有価証券その他これに準ずるもので政令で定めるもの(自己が有する自己の株式又は出資を除く。)をいう。(法法2二十一)」と規定されています。つまり自己株式は有価証券から除外されているため、法人税法上の資産には該当しないことになるのです。
以上のような理由から100万円の簿価の自己株式を売価90万円で売ったとしてもその差額である10万円については損金に算入できないのです。

ここでは有価証券の譲渡損益に関してよくある問題と質問と答えを簡単に紹介しました。少し難しいですが、実際の場面でも必要になってくるのでぜひとも覚えておきたい知識です。

次回は有価証券の譲渡による損益の計上時期についてよくある質問と回答について紹介していきますね。

*一部の場合とは、新株予約権の行使によりその行使をした者に自己の株式を交付した場合等を指します。

※記事に含まれる法令等の情報は、記事作成時点のものとなります。法令等は随時変わる可能性がありますので、本記事を実務に生かされる際には最寄の税務署か税理士へ確認してください。