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コラム
会社を次の世代へと引き継ぐ際に、法人であれば事業承継税制という制度を使用することで、税金の支払いに猶予が与えられ、最終的に免除されることがあります。しかし、あまり知られていませんが、個人事業主も事業承継税制を使用することができるのです。
2019年の税制改正により、個人事業主に対してもほぼ同様の事業用資産にかかわる相続税、贈与税の納税猶予制度が創設されました。この制度のことを、「個人版事業承継税制」と言います。
個人版事業承継税制とは、個人事業主の事業用資産を後継者に相続や贈与で引き継いだときに、本来払うべき相続税や贈与税が最終的に免除される可能性がある制度です。個人版事業継承税制を用いると、現在の経営者から後継者へ相続か贈与で事業用資産を引き継いだ場合、相続税、贈与税の納税が猶予されます。さらに、将来的にいくつかの条件を満たせば、支払いが猶予されていた税金が免除されることもあります。
猶予されていた税金が全額免除される条件はいくつかあります。
・先代事業者(贈与者)の死亡
・後継者(受贈者)の死亡
・この制度を受ける別の後継者に贈与する場合(免除対象贈与)
・やむを得ない理由があり事業が継続できなくなった場合
・破産手続開始決定があった場合
また、「民事再生計画認可決定があった場合」などの条件を満たせば、税金が一部免除されます。
個人版事業承継税制の対象となる資産の事を「特定事業用資産」といいます。特定事業用資産は、先代事業者が事業のために使っていた資産です。具体的には、贈与や相続のあった年の前年分の事業所得にかかわる青色申告の貸借対照表に計上されていた、以下のような資産です。
・宅地等(400㎡まで)
・建物(床面積800㎡まで)
・建物以外で固定資産税の課税対象となっているもの
・車両運搬具
・器具備品
・機械装置
・生物(乳牛や果樹など)
・無形固定資産(特許権など)
個人版事業承継税制の対象となる人の要件は細かく定められています。生前贈与と相続では少々異なりますが、ここでは生前贈与の場合の要件をご紹介します。
まず、先代事業者についての要件は2つあります
1.贈与税申告期限までに廃業届出書を提出している、または提出する見込みであること
2.贈与の年、その前年、前々年の確定申告書を青色申告で行っていること
後継者(贈与を受ける人)の要件は5つあります。
1. 贈与日に20歳以上であること
2. 「経営承継円滑化法」の認定を受けていること
3. 贈与日の3年以上前から対象となる特定事業用資産に係る事業に引き続き従事していたこと
4. 贈与税申告期限までに開業届出書を提出し、青色申告の承認を受けていること
5. 特定事業用資産に係る事業が、資産管理業(不動産などの資産運用業など)及び性風俗関連特殊営業に該当しないこと
2.の「経営承継円滑法」の認定を受けるための手続きに関しては、次の章で解説します。
事業承継税制の適用を受けるためには、後継者はまず「個人事業承継計画」という書類を作成する必要があります。個人事業承継計画書の様式は、中小企業庁のホームページ(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_kojin_ninntei.htm)からダウンロードすることができます。
そして、2024年3月31日までに都道府県知事に個人事業承継計画を提出し、「経営承継円滑化法」の認定を受けなければなりません。
後継者へ事業承継をしたあとは、開業届を提出し、青色申告の承認を受けることが必要です。さらに、贈与税または相続税の申告期限までに、贈与税申告書または相続税申告書と一定書類を税務署に提出し、猶予される税額に見合う担保を提供しなければいけません。これらの手続きにより、税金の猶予を受けることができます。
納税猶予が適用されたあとは、税金の申告期限から3年ごとに、「継続届出書」を税務署に提出する必要があります。
本制度の対象となった資産に関する事業を継続している間は、相続税や贈与税は猶予されますが、事業を廃止した場合には、基本的に相続税や贈与税の全額に利子をつけて納付しなくてはいけないので注意が必要です。
事業を代々引き継いでいく場合は、相続税や贈与税が実質的に免除されるため、事業の継承が非常に容易になる効果的な制度です。一方で、後継者が生涯その事業を続けていく意志が薄い場合などは、効果は限定的になるでしょう。
「個人版事業承継税制」は、適用要件や税金の免除額の規定なども中々複雑な制度です。個人事業の承継をお考えの方は、税理士までご相談ください。