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事業承継の流れと基礎知識

株式の事前承継によって相続の遺留分に係る弊害を解消できるケース ②経営承継円滑化法の手続きと効力発生要件

前回は、遺留分に関する民法の特例等を定めた法律「経営承継円滑化法」についての内容と適用要件をご紹介しました。「経営承継円滑化法」の内容を把握し適用要件をクリアしたら、次は手続きに進み、最後に効力が発生するための要件をクリアする必要があります。
今回は前回に引き続き、「経営承継円滑化法」についての手続きと効力発生要件をご紹介しましょう。

◎特例を受けるための手続き

<推定相続人全員の書面による同意>
本合意および各定めはすべて、後継者を含む推定相続人全員でもって、書面にて行わなければなりません。

<経済産業大臣に対する申請>
本合意がなされた場合には、合意の日から1カ月以内に当該合意に関し、経営の承継の円滑化を図るためにされたものであること等の確認を受けるために、経済産業大臣に書面にて申請をしなければいけません。

<家庭裁判所に対する許可申立て>
経済産業大臣の確認を受けた場合には、受けた日から1カ月以内に後継者は家庭裁判所に上記合意の許可を求める申立てをしなければなりません。現行民法上の遺留分の放棄の制度は、遺留分放棄をする推定相続人本人が、個別に家庭裁判所に申立てをしなければならないことと比較すると、利益を受ける後継者が一括で手続きをすることになりますので、他の推定相続人の負担が軽減され、手続がより簡易になっています。

◎特例の効力が発生するために要件

本合意は家庭裁判所の許可でもってその効力が生じることになります。本合意については以下の場合にはその効力が失われることになりますので、特に下記の②や④には注意が必要です。
①経済産業大臣の確認が取り消された場合。
②旧代表者の生存中に後継者が死亡し、または後見開始もしくは保佐開始の審判を受けた場合。
③上記合意の当事者以外が新たに旧代表者の推定相続人になった場合。
④上記合意の当事者の代襲者が旧代表者の養子となった場合。

※記事に含まれる法令等の情報は、記事作成時点のものとなります。法令等は随時変わる可能性がありますので、本記事を実務に生かされる際には最寄の税務署か税理士へ確認してください。