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事業承継の流れと基礎知識

株式の事前承継によって相続の遺留分に係る弊害を解消できるケース①経営承継円滑化法の内容と適用要件

これまで株式を後継者に承継する場合について色々とご紹介していきましたが、最近遺留分に関する民法の特例等を定めた法律が制定されたのをご存知ですか。今回はこの法律についての内容と適用要件をご紹介します。

◎「経営承継円滑化法」の内容

中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律「経営承継円滑化法」では、以下のように遺留分に関する民法の特例が定められました。
①生前に贈与した株式を遺留分算定の基礎財産に算入させないこと
②生前に贈与した株式について、遺留分算定の基礎財産への算入に際し、その価額をあらかじめの合意により定めることができること。(ただしその価額は、弁護士、公認会計士、税理士等がその時における相当な価額として証明したものに限る)
これにより、例えばAさんにとってはあまり考えたくないことですが、Aさんが死亡した後に後継者である長男と相続人である妻、長女との間に相続に関する争いが生じたとしても、生前に贈与した株式・事業に必要不可欠な財産(土地や建物等)は遺留分の算定の基礎財産に算入されないことになるので、長男は事業承継を円滑に行うことが可能になるのです。

◎特例が適用されるための要件

<特例が適用される会社の規模・合意内容>
①中小企業であって、一定期間以上継続して事業を行っていること。
②特例中小企業者の代表である、またはあった者がその推定相続人であって、特例中小企業者の代表である者に対し、特例中小企業者の株式の贈与を行い、その結果後継者の保有する株式数が総株主の議決権の過半数を有することになったこと。
以上の各要件に該当する場合には、後継者とその他の推定相続人は全員でもって以下の合意をすることができます。
①後継者が贈与によって取得した株式の全部または一部について、その価額を遺留分を算定するための財産の価額に算入しないこと
②後継者が贈与によって取得した株式の全部または一部について、遺留分を算定するための財産の価額に算入すべき価額を、当該合意の時における価額とすること

<後継者以外の推定相続人がとることのできる措置>
この合意をし、あわせて後継者が合意の対象とした株式を処分する行為をした場合、または旧代表者の生存中に後継者が特例中小企業者の代表として経営に従事しなくなった場合に、後継者以外の推定相続人がとることのできる措置に関する定めをしなければいけないとされています。例えば後継者に違約金の支払いをさせる等の措置が考えられます。

<事業に不可欠な財産の承継>
上記合意をする際に、あわせて後継者が旧代表者から贈与により取得した不動産等の財産の全部または一部について、その価額を遺留分を算定するための財産の価額に算入しない旨の定めをすることができます。これにより特例中小企業者の株式の他にその事業に必要不可欠な財産(土地、建物等)を円滑に後継者に承継することができるようになりました。

※記事に含まれる法令等の情報は、記事作成時点のものとなります。法令等は随時変わる可能性がありますので、本記事を実務に生かされる際には最寄の税務署か税理士へ確認してください。

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