COLUMN

コラム

事業承継の流れと基礎知識

長男などの後継者にしたい相手に会社の株式を承継させる方法②生前贈与

前回は、後継者にしたい相手に会社の株式を承継させる方法のうちの1つ目「遺言」をご紹介しました。今回は2つ目の「生前贈与」についてご紹介します。

<Aさん情報>
Aさんは会社を経営しており、90%の株主でもあります。家族は妻と長男・長女がいますが、将来は長男を後継者にしたいと考えています。

◎生前贈与の注意点①特別受益・遺留分

Aさんの場合、長男は後継者として生前贈与や遺贈などを受けることにより、他の妻や長女に比べて特別の利益を受けることになります。すると残された相続財産を基礎として法定相続分をそのまま適用すると、妻や長女によって分配された財産に不平等が生じてしまいますよね。よって長男が生前贈与や遺贈により受けた特別の利益は相続財産として扱われ、相続分の算定の基礎となります。また生前贈与や遺贈によって受けた財産は遺留分算定の基礎財産にも参入されることになります。
よって生前に長男に株式を贈与してのはいいものの、これが特別利益として扱われたり、遺留分算定の基礎財産として扱われたりして、それ以外の財産を長男が取得できないということも考えられます。

◎生前贈与の注意点②贈与税…暦年課税

暦年課税とは、一年間の贈与額に応じて贈与税を計算するという原則的な計算方法です。暦年課税では年間の基礎控除額は110万円なので、1年間ごとに時価で110万円分の株式を贈与した場合であれば課税されません。よって例えばAさんが比較的まだ若いのであれば、万が一の時までまだ長い年月があるので、しばらくの間は暦年課税の範囲内で長男に一部の株式を贈与していけば、節税対策にもなりますよ。

◎生前贈与の注意点③贈与税…相続時精算課税

相続時精算課税とは、贈与を受ける者が贈与に取得した財産の価額(相続税評価額)につき、累計で2500万円まで贈与税が課税されず、これを超える額につき贈与税が課されるという課税方式です。この場合相続時には相続財産の価額に相続時精算課税を適用した贈与財産の価額を合算して相続税額を計算します。算出された相続税額から、相続時精算課税を適用して納付した贈与税額を控除し、控除しきれない額は還付されます。
ここで注意したいのは、相続時精算課税を選択すると、通常の暦年課税を適用することができないということ。選択後はその贈与者からのその後の贈与はすべて相続時精算課税に取り込まれてしまいます。

※記事に含まれる法令等の情報は、記事作成時点のものとなります。法令等は随時変わる可能性がありますので、本記事を実務に生かされる際には最寄の税務署か税理士へ確認してください。