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事業承継の流れと基礎知識

M&Aで会社を存続させる場合の手法の選択と自社役員・従業員の位置づけ

今回は、M&Aで会社を存続させる場合の手法の選択と、自社役員・従業員の位置づけをご紹介します。

前回M&Aの「株式譲渡・事業譲渡・合併」についてご紹介しましたが、この中のどの手法を選択するかということが重要になってきます。ここでは各方法のリスクをあげてみましょう。

◎株式譲渡のリスク

会社の有形、無形すべての資産をそっくりそのまま譲り受けることになります。そのため経理処理・税務処理などの体制が十分でない規模の会社においては、売り手の潜在債務、簿外債務などを引き継いでしまうことがあります。

◎事業譲渡のリスク

会社の中から一つの部門や事業所、さらには不動産や営業権、売掛金等の資産を個別に譲渡の対象にするため、債務を自動的に引き継ぐことはありません。他方で、事業上の許認可を引き継ぐことができません。また、顧客・取引先も場合によっては事業譲渡を機に離れてしまうおそれがあります。
なお、従業員を承継するには従業員の同意が必要とされており、資産等を個別に譲渡(承継)するための手続きも煩雑になります。

◎合併のリスク

株式譲渡と同様、会社の有形、無形すべての資産をそっくりそのまま譲り受けることになるため、経理処理、税務処理などの体制が十分でない規模の会社においては、売り手の潜在債務・簿外債務などを引き継いでしまうことがあります。そして2つの会社がいきなり同一法人となるので、お互いの会社風土、文化を慎重に考慮しておく必要があり、摩擦が起こってしまうな場合もあります。

ところで、M&Aを行った場合に自社の役員や従業員は解雇されてしまうのでしょうか。

◎役員の場合

株式譲渡では、役員はそのままであり、解雇されるわけではありません。しかし会社の規定により、過半数の株式を取得した承継先の会社は、株主総会の普通決議によって株式を譲渡した役員をいつでも解雇することができますので、新たな経営者の移行によっては旧役員を解任することもあり得ます。
事業譲渡・合併では、承継先の会社の株式総会で役員として新たに選任されない限り、承継先の会社の役員となることはできません。

◎従業員の場合

株式譲渡や合併の場合には承継先でも雇用関係が継続されます。事業譲渡の場合には、当選には雇用関係は継続されないため、新たに承継先と雇用契約を締結し直す必要があります。

役員や従業員の地位を維持させたい場合は、承継先と会社との間であらかじめ合意しておくのが無難でしょう。

※記事に含まれる法令等の情報は、記事作成時点のものとなります。法令等は随時変わる可能性がありますので、本記事を実務に生かされる際には最寄の税務署か税理士へ確認してください。