COLUMN

コラム

事業承継の流れと基礎知識

平成30年から、事業承継税制が変わります!

日本に籍を置いている企業のうち、99%以上が中小企業だと言われています。つまり、日本経済の行く末を握っているのは、ニュースで名前を聞くような大企業だけではありません。中小企業も、重要な役割を担っているのです。そんな中小企業において、ここ十数年で顕著になった課題があります。それは、どのようにして事業承継に際してのハードルを下げていくか、です。

事業承継の妨げになるものとは?

事業承継とは読んで字のごとく、事業を承継する行為のこと。社長が高齢や病気などによって社長業を続けられなくなってしまったときに、ご子息や従業員などにその肩書と株式を譲り渡すことを言います。日本には何百年、何十代と続く老舗企業がたくさんありますが、いずれも事業継承を繰り返して現代までその名を継いできているのです(株式制度が取り入れられたのは近代以降ですが)。

現在では多くの企業が株式会社の形をとっています。株式会社ということは、株主が企業への出資者であり、経営権も株主にあります。これは非上場企業であっても変わりません。そして非上場企業のほとんどの場合、経営者が筆頭株主となっています。つまり、社長の肩書と共に会社の経営権を譲るためには、株式も同時に渡さなければならないのです。

ならば株式の所有権を移行すればいいじゃないか、と考えるかもしれませんが、話はそう単純ではありません。というのも、例え非上場企業であってもその株式には価値が付いており、例えば年間利益が5000万円ほどの優良中小企業であれば、億単位の値が付くことも珍しくはないからです。つまり、会社の筆頭株主である企業の社長というのは数億円の財産を持っているのと変わりなく、持っている株式を譲れば、現金を相続したり生前分与したりするのと同様に、相続税や贈与税が発生してしまうのです。

ここで問題になるのが、税金は現金で納めなければならないということ。なにせ株式というのは、売れば価値があるというだけで、売らなければ一円にもなりません。したがって、税金が発生するほどの相続を受けても、現金がないから税金が払えないという事態が発生してしまうのです。

このようなケースは実際に多く見受けられ、2000年以降たくさんの中小企業が、事業承継が上手くいかずに解散の憂き目を見てきました。しかし、冒頭でも申し上げたように、日本の行く末の一端は中小企業も握っています。そこで国が動き出し平成21年に誕生したのが、事業承継税制です。

これは後継者が支払う税金を、一定要件を満たすことで支払いを猶予してあげようと、というもの。かなり魅力的な制度に見えますが、一定要件というのが正直かなりハードルの高いものだったので、この制度を使って事業承継を行う企業はまだまだ少ないのが現状です。なかでも「雇用要件」という5年間は承継時にいた従業員数の8割の人数は確保しなければならないという要件は、過去の税制改正で「5年間の平均で判定」するようになったものの、先の通しが立てづらい中小企業にはなかなか厳しい要件の代表ともいえます。

30年の事業承継税制の改正で、適用要件が大きく緩和!

ただ、国益という視点で考えたとき、一番の損失となるのは税収が下がるよりも優秀な企業が解散してしまう事です。そこで国としても改正をかさね、特にこの度の平成30年の事業承継税制改正では、今後10年に限って適用要件の大幅な緩和が実施されることとなりました。

なかでも、中小企業にとって非常にハードルが高く制度利用を躊躇する要因ともなっていた「雇用要件」の抜本的な見直しが行われ、業績悪化などの理由があれば平均で8割を満たしていなくても免除されるという実質的な撤廃状態となり利用しやすくなりました。他にも対象株式数上限等の撤廃により、改正前は猶予される税金は移動する株式の3分の2相当に限定されていましたが、改正後は全額に適用されることとなったのです。他にも事業スタイルに合わせた柔軟な後継者選びが可能(対象者の拡充)になる等、改正点はあるのですが、こちらの説明に関してはぜひ直接ご説明させていただきたいと思います。ここまで述べてきたように、事業承継税制に関しては確かに非常に使いやすくなりましたが、やはり完璧な運用は難しいですし、税制云々以前に承継前にやっておくべきことなどもご紹介できるからです。事業承継を考えている、いつかは取り組まなければいけないなと感じ始めた。そんなときには一度、税理士事務所にご相談ください。


※記事に含まれる法令等の情報は、記事作成時点のものとなります。法令等は随時変わる可能性がありますので、本記事を実務に生かされる際には最寄の税務署か税理士へ確認してください。