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コラム
今回も、引き続き、「退職給付債務」と「退職給付引当金」の処理方法について確認していきましょう。
中小企業では、中小企業退職金共済制度などを活用して、退職金の一部または全部について、一時の資金負担を軽減しているところもあります。また、確定拠出年金制度も、制度に加入し掛金を拠出すれば、企業には退職金の負担が生じないわけですね。つまり、その分の退職給付債務はないということになります。
中小企業会計指針においても、こうした制度に加入している場合は、掛金拠出額を費用処理することとされています。
退職給付引当金を計上していなかった企業が、中小企業会計指針を適用し退職給付引当金を一括して引き当てる場合、「適用時差異」が生じる可能性があります。このため、「適用時差異」は、通常の会計処理とは区分し、10年以内の一定の年数、または平均残存勤務数のいずれか短い年数にわたって、定額法により費用処理することとされています。
適用意差異を10年で計上する場合、この処理によって、毎期、適用時差異の10分の1ずつ退職給付引当金が計上され、超簿外の負債が減少していくということになります。
企業が中小企業退職金共済制度などを導入しておらず、一時金のみで支給する場合は、退職給付引当金の会計処理は次のようになります。
例)
退職金のデータ
・前期末の自己都合退職金要支給額 100万円
・当期の退職金支給額 20万円
・当期末の自己都合退職金要支給額 110万円
このケースにおける、適用時差異、当期計上すべき退職給付引当金、決算整理仕訳がどのようになるか見ていきましょう。
①適用時差異の計算
前期末の自己都合退職金要支給額(100万円)ー当期の退職金支給額(20万円)=適用時差異(80万円)
②当期計上するべき退職給付引当金の計算
A)当期の退職給付費用の計算
当期末の自己都合退職金要支給額ー(前期末の自己都合退職金要支給額ー当期の退職金 支給額)=当期の退職給付費用
110万円ー(100万円ー20万円)=30万円
B)適用時差異の当期費用処理額
適用時差異×1/10
80万円×1/10=8万円
③会計処理
(借)退職給付費用 300,000 (貸)退職給付引当金 300,000
(借)会計指針適用時差異の費用処理額 80,000 (貸)退職給付引当金 80,000
上記により、当期末の退職給付引当金は38万円となり、簿外負債は、80万円ー8万円で、72万円ということになります。
※記事に含まれる法令等の情報は、記事作成時点のものとなります。法令等は随時変わる可能性がありますので、本記事を実務に生かされる際には最寄の税務署か税理士へ確認してください。