COLUMN

コラム

決算書の作り方・ひな形

中小企業が従うべき企業会計の慣行と「中小企業の会計に関する指針」

ここでは、会社法にみる「会計の原則」についてひも解いてみましょう。

会社法第431条では、「会計の原則」について、「株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする」と定めています。
企業会計の基準は、経済活動の進展によって変更されることが多分にあります。そこで会社法では、「会社の計算」に関して、第431~465条で大枠をまとめ、細部については会社計算規則や会社法施行規則などの省令にゆだねるという規定の仕方をとっています。
しかし、会社法施行規則などの省令でも細部までは規定できないし、細部を規定することも現実的ではありません。そこで、細部の解釈やその適用は、「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の企業会計の慣行」を斟酌することされています。

それでは、「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の企業会計の慣行」とは、どのようなものでしょうか。


上場企業では、証券取引法が適用され、会社法で開示を要求されている計算書類とは別に、「有価証券報告書」を公表しなければならないことになっています。中小企業でも、「一般に公正妥当と考えられる企業会計の慣行」として、「中小企業の会計に関する指針」を遵守することが望ましいとされています。

ところで、平成12年3月期から大企業を中心に国際基準と調和した会計基準を続々導入していきました。このとき、企業数の98%を占める中小企業では①従来のままの会計基準(主として税法基準)でいくのか、②新しい会計基準を適用するのか、という2つの選択肢がありました。ただし、新しい会計基準が複雑だったため、大半の中小企業では従来の会計基準を適用していました。


ところが、資金調達の柱である銀行が企業の格付けを行って金利や融資条件を決定するようになり、適正な決算書が重要視されるようになってきます。
そこで、一部の中小企業では自ら税効果会計やキャッシュフロー計算書などの会計基準の一部を適用して、会計情報の信頼性を高める企業も出てきました。
そして、中小企業向けのある程度簡便で、かつ統一的な会計基準が必要ということになり、日本公認会計士協会・日本税理士会連合会・日本商工会議所・企業会計基準委員会の連名で、「中小企業の会計に関する指針」が制定されたのです。

※記事に含まれる法令等の情報は、記事作成時点のものとなります。法令等は随時変わる可能性がありますので、本記事を実務に生かされる際には最寄の税務署か税理士へ確認してください。