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相続対策・相続税務の基礎知識

相続放棄した家が倒壊したらどうなる?空き家の相続と相続放棄についての注意点

 親族が亡くなり、故人の家を相続する際によく発生するのが「空き家問題」です。
遠方にある家を相続したり、自身の持ち家があるのに相続することになったりすると、しかたがないからと相続した家を空き家にしてしまうケースがあります。

しかし実は空き家として放置し続けることには多くのデメリットがあるのです。デメリットを避けるためには、被相続人が生前のうちに対策しておく必要があるでしょう。

では対策をしなかった場合、相続するしか方法がないのでしょうか?そこで選択肢に挙がるのが「相続放棄」です。しかし、相続放棄をしたら終わり、というわけではありません。また、相続放棄にもデメリットがありますので、安易に選択するのも考え物です。

 今回は空き家となる故人の家の相続と相続放棄について解説いたします。相続の際の参考になりましたら幸いです。

◎故人の家を相続することによって発生する税金

 故人の家を相続した場合、その時点でさまざまな税金が発生します。その税金は主に「相続税」「固定資産税」「都市計画税」の3つです。

・相続税
相続した財産にかかる税金のことです。不動産、預金、車などの財産に課されます。
相続する財産の総額が、3,600万円以内であれば、「基礎控除額」と呼ばれる税金のかからない金額の範囲内ですが、3,600万円を超えると、10%から最大で55%の税率で課されます。

・固定資産税
長期に渡り保有する「固定資産」に課される税金です。
空き家などの不動産の場合、土地と建物両方が固定資産にあたります。空き家を保有し続ける限り払い続けなければならない税金です。
固定資産税は、以下の式で計算されます。

固定資産税 = 評価額(課税標準額) × 標準税率

評価額は、土地の公的価格や家屋の時価額をもとに算定されます。
税率は自治体により異なりますが、基本的には1.4%程度です。しかし、多くの住宅は、「住宅用地の特例」という優遇措置が受けられ、税率が1.4%の1/6、0.2%程度まで抑えられます。
そのため、平均的な家屋の場合、固定資産税は10万~30万円程度となります。

・都市計画税
相続した家が、都道府県が指定する「市街化区域」にある場合に発生する税金です。


 相続した家を空き家としてしまう場合、特に注意しなければならないのは、固定資産税の増額です。
「空き家等対策特別措置法」という法律により、放置されている空き家には、税率が低くなる特例が適用されない場合があります。最大で固定資産税が6倍になる恐れがあるのです。
そうなる前に、適切な手を打つべきでしょう。

◎相続した家を空き家として放置した際のデメリット

 空き家を放置して発生するデメリットは、毎年かかる税金や、固定資産税の増税だけではありません。周囲の多くの人に迷惑をかける可能性があるのです。空き家を放置した際のデメリットは、大きく分けて3つあります。

1. 老朽化して周辺に迷惑をかける
人が居なくなった家は急激に老朽化するもの。倒壊や、台風で屋根が飛んでいくなど、老朽化により周辺の家屋や通行人などを巻き込んだ事故が発生する可能性があります。また、老朽化した家は見た目も良くないため、地域の景観にも悪影響を与えます。

2. 害虫、害獣の発生
空き家からはネズミなどの小動物や、シロアリなどの害虫が発生しやすくなります。害獣・害虫の糞尿などにより地域の衛生環境が悪化したり、シロアリが他の住宅に移り繁殖してしまったりなどの危険もあるのです。

3. 他人が立ち入り、犯罪の拠点となる
実は、管理されていない空き家は犯罪の拠点とされてしまうことがあります。ゴミの放置から、重大な犯罪の拠点に至るまで、知らないところで空き家が悪用される事例が後をたちません。周辺の治安も悪化しますし、放火などされたら周辺住宅まで延焼してしまう危険性もあります。

◎空き家を相続したくない!相続放棄は可能?

 とはいえ、やはり空き家とせざるを得ない家屋を管理するのは大変ですよね。そこで検討されるのが「相続放棄」です。

相続放棄とは、文字通り財産を相続する権利を放棄すること。相続放棄を選択すると、預金や土地などの財産、そして借金などのマイナスの財産もまとめて全て放棄することになります。つまり、「空き家にしてしまう家」だけを選択して放棄することはできないので注意が必要です。

相続放棄をすると、もちろん相続税や固定資産税などの相続にまつわる税金も払う必要がなくなります。しかし、相続放棄をしたからそれで終わり、というわけではありません。なぜなら、相続放棄をしてもその家の管理責任が残る場合があるからです。

相続放棄をすると、相続権はその次の順位の相続人に移ります。もし次の順位の相続人が相続放棄をしたら、またその次の順位の相続人・・・と相続人の候補がいる限り移り続けます。ではその相続人が決まっていない期間の空き家となっている家の管理責任は誰にあるのか。実は、民放第940条第1項にて、「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」と定められています。つまり、最初の相続人に管理責任が残るのです。

では全員が相続人の全員が相続放棄をした場合はどうなるのでしょうか。相続人がいなくなった後は、「相続財産管理人」を選任する必要があります。相続財産管理人を選任するまでの間も、管理責任は最初の相続人に残ります。

つまり、相続人が決まるまで、もしくは相続財産管理人を選任するまでの間に家が倒壊する等の事故が起こった場合は、相続放棄をしたにも関わらず責任を負うことになる可能性があるのです。


 相続財産である空き家を、相続放棄をして完全に自分の管理から手を離すのは容易ではありません。様々なトラブルの種である「空き家」にお困りの際は、一度ご相談ください。