COLUMN

コラム

相続対策・相続税務の基礎知識

相続税の物納に必要な適格要件を満たすための、土地の交換という方法

相続税の要件を満たすための土地の交換方法

今回は、相続税の物納に必要な適格要件を満たすための、土地の交換という方法をご紹介します。

例えば、Aさんはある宅地(隣地は叔父が所有)を父からの相続により取得し、それを物納することで相続税の納付に充てたいと考えています。しかしこの宅地は間口が1.5mしかないため建物の建築ができず、物納適格にならないと聞きました。何かよい方法はないでしょうか。

この場合、叔父が所有する隣地の一部を交換により取得し、間口を2m以上確保する方法がおすすめです。土地を物納するときの要件としては主に次のものがあります。
①物納財産は相続財産であること。ただし相続財産によって取得した財産(転得財産)は認められる。
②「管理または処分するのに不適当な財産」は物納不適格とする。(「管理または処分するのに不適当な財産」は「管理処分不適格財産」として相続税法施行令第18条、相続税法施行規則第21条に財産の種類ごとに例示されています)

Aさんの宅地は間口が2m以上ありませんので、建築基準法の要件を満たさず、建物を建築することができません。このことから「売却できる見込みのない不動産」として、物納不適格とされる可能性が強いと考えます。そこで叔父の有する隣地から間口2mをクリアできるように土地の一部を交換します。(間口の追加部分は転得財産)
この交換による譲渡所得にかかる税については、交換後まもなく物納しますので「固定資産の交換特例」は適用できず、通常の譲渡課税になりますが、場合によっては「相続税の取得費加算」により譲渡所得への税は生じません。

Aさんのように、事前にこのケースのようなことが見込まれる場合には、相続開始前にこのように交換するか、または間口不足分を隣地から買い入れることで以下の対応を考えることができます。
 ①相続前に全体を売却して現金化
 ②相続税の取得費加算等を考慮の上、相続開始後に売却して現金化
 ③速やかな物納

今回ご紹介した内容は、テクニカルな話が多い相続税への対応方法の中でも、最たる例になるかもしれませんね。相続が発生したけれど、相続税を払う余裕がないし、物納も不適格・・・と八方塞のように陥ってしまう場合は、よくあります。しかし正確な税務知識とそれを的確に活用するノウハウがあれば、なんとかできることが多いものなのです。だからこそ、こと相続に関しては、何はともあれ税務の専門家にご相談いただくのが、無駄な不安にさいなまれないためにも、時間と税の節約のためにも重要です。当事務所では相続関連の専門サポート機関として「相続手続き支援センター」を立ち上げておりますので、なにはともあれまずはご相談くださいね。

※記事に含まれる法令等の情報は、記事作成時点のものとなります。法令等は随時変わる可能性がありますので、本記事を実務に生かされる際には最寄の税務署か税理士へ確認してください。