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コラム
これまで相続時精算課税の様々な利用方法をおおくりしていきましたが、今回は相続時精算課税で貸家を贈与するとどのようになるかを、ご紹介します。
例えば、Aさんの父(同一生計)所有の土地・建物を、Aさんの会社が借りて事業を行っているとします。会社からは通常の家賃を支払っていますが、Aさんの父は他の所得も多いため所得税が高額になっています。またAさんの父の相続税もかなりの額になると考えられます。今回Aさんがこの建物の贈与を受け、家賃はAさんが受け取りAさんの父への地代は支払わないようにしたいと考えています。なお、建物の固定資産税評価額は4000万円、家賃は年間500万円です。この場合、何か注意点はあるでしょうか。
この贈与により、Aさんの父に家賃収入が貯まる(相続財産が増える)のを防ぎ、収入の流れを変えることができます。また家賃収入も子の所得になるため、子の所得の方が少なければ、所得税の税率も下がります。さらにAさんの父が同一生計ですので、土地にかかる固定資産税も子の不動産所得の計算上、必要経費にすることもできます。
Aさんの父に相続が発生すると、この土地は使用貸借によって貸している土地となるので、本来であれば100%の評価になってしまい、贈与前の貸家建付地評価(約80%)よりも、かえって評価額が上がることになってしまいます。しかし贈与前から相続時までずっと同一のものが建物を賃借している限りは、その土地は貸家建付地としての評価をすることができるとされています。
以上のことから相続開始までこの法人が建物を借り続けることがポイントとなります。
贈与による建物の課税価格は、固定資産税評価額によります。さらにその建物が貸家の場合には30%評価減します。よって今回の贈与額は「4000万円×70%=2800万円」となります。
◎相続時精算課税による贈与の場合
今回の贈与税は「(2800万円ー2500万円)×20%=60万円」で済むことになります。そして将来の相続時には今回の贈与額2800万円が相続財産に課税され、相続税から今回の贈与税60万円が控除されることとなります。
◎一般の贈与の場合
今回の贈与税は(2800万円ー110万円)×50%-225万円=1120万円」になります(実効税率:1120万円/2800万円=40%)。相続開始前3年以内の贈与は生前贈与とされ相続財産に加算されますが、贈与時から3年経過すれば相続財産から切り離すことが可能になります。
※記事に含まれる法令等の情報は、記事作成時点のものとなります。法令等は随時変わる可能性がありますので、本記事を実務に生かされる際には最寄の税務署か税理士へ確認してください。