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資金調達の基礎知識

融資の種類「商業手形割引」「手形貸付」「証書貸付」「当座貸越」

融資の代表的な種類として、「商業手形割引」「手形貸付」「証書貸付」「当座貸越」の4つがあります。
それぞれの融資形態には、どのような特徴があるのでしょうか。

◎商業手形割引

企業が売上代金決済として受けた受取手形を銀行が買い取る形で資金提供を行う形態です。
手形割引ということが多いですね。
厳密には、手形の買い取りであって、貸付とは違いますが、銀行では融資のひとつとして位置づけています。
銀行としては、買い取った手形を期日に取り立てることで資金回収ができるため、手形が不渡りにならなければ貸倒れになることがなく、普通の融資よりリスクが小さい融資とみなされます。
製造業、建設業、卸売業などで多く利用されているのが特徴です。

・メリット
1.早期資金化が可能
売上代金を現金で受け取るよりも遅れて入金される手形を、満期を待たずに現金化できるため、資金繰りの改善につながります。

2.借入よりも手軽に利用できる場合がある
銀行融資よりも審査が簡易な場合があり、比較的スムーズに資金を得ることができます。

3.手形の信用力を活用できる
自社の信用力ではなく、手形発行企業の信用力が判断材料になるため、信用力のある取引先からの手形であれば有利に割引されます。

・デメリット

  1. 取引停止になり事実上の倒産になるケース
    会社の口座残高が足りないと、約束した期日に手形を決済できず「不渡り」になります。半年で2回出すと事実上の倒産と見なされます。また、手形の発行元が支払不能(不渡り)となった場合、その手形は無効となり、割引を受けた企業が返済を求められる(償還義務)ことになります。
  2. 割引料(利息)が発生する
    満期までの期間に応じて、割引料(銀行の取り分)が差し引かれ、満額を受け取ることはできません。
  3. 信用情報に影響を与える可能性
    頻繁な割引利用は、銀行側に「資金繰りに余裕がない」と見なされ、信用評価に影響を与える可能性もあります。

◎手形貸付

約束手形を担保にして借入れをする方法です。
手形を使っていない企業では、貸付用の手形を用いて利用します。
手形貸付は、貸付の手続きが簡単なので、頻繁に利用される短期融資に向いています。
利用する代表的な業種は、建設業、IT業などがあげられます。
たとえば、建設業の場合、工事などが完了し、売上金が入金されるまでの間に発生する材料仕入れ、外注費などへの支払いをあてるための運転資金として借り、売上金回収の際に返済するという形で、工事引当資金として借りるケースが多いですね。

・メリット

  1. 手続きが比較的簡便
    融資契約書ではなく、「借入手形の発行」で済むため、書類手続きが簡素です。既に取引実績のある銀行であれば、スピーディーに実行されることもあります。
  2. 短期資金を柔軟に調達できる
    数か月以内の運転資金や一時的な資金ニーズに適しており、比較的自由に使えます。
  3. 返済期日が明確
    手形の満期日に一括返済する形式なので、資金計画が立てやすいです。

・デメリット

  1. 利息が前払いになる(利息引き去り)
    一般的には、借入金からあらかじめ利息分を差し引いて融資されるため、実際に手元に残る資金は少なくなります(実効金利は高めになることも)。
  2. 満期時に一括返済が必要
    満期日に全額返済する必要があるため、資金繰りに余裕がないと、借換えや新規借入が必要になります。

◎証書貸付

証書貸付とは、金銭消費貸借契約書に署名、押印して銀行から資金を借りる方法です。
契約書=証書を交わして融資を受ける形態なので、証書貸付といっています。
契約書の作成、連帯保証人の押印、印鑑証明書、登記簿など、用意しなければいけない書類が多く、手続きが煩雑なため、利用頻度の高い短期融資には向いていません。
返済期間が1年以上の長期融資に使われるのが一般的ですね。

・メリット

  1. 借入条件が明確で安心
    契約書(証書)で「借入額・利率・返済期間・返済方法」が明記されるため、条件が明確でトラブルを防ぎやすい。
  2. 中長期の資金調達に向いている
    証書貸付は、返済期間が1年以上の中長期融資に対応することが多く、設備投資や新規事業立ち上げなどに適しています。
  3. 返済方法が柔軟(分割返済など)
    元金と利息を毎月分割して返済するなど、無理のない返済計画を組むことができます。
  4. 資金使途が広く対応可能
    運転資金、設備資金、借換え資金など、幅広い用途で利用可能です。

・デメリット

  1. 契約書作成などの手続きが複雑
    手形貸付と比べて、契約書の取り交わしや書類の整備が必要で、融資実行までに時間と手間がかかることがあります。
  2. 信用力や担保が求められる
    金融機関は審査を慎重に行うため、信用力が不足している場合や、担保や保証人が必要になる場合があります。
  3. 途中解約に制約がある
    契約期間中に繰上返済や条件変更をする際には、金融機関の承諾や手数料が必要になることがあります。

◎当座貸越

当座貸越とは、設定された限度額までは自由に資金を借りたり返したりすることができる融資形態です。
契約期間内であれば、借りたままにもできるのが特徴です。
必要なときにすぐに資金を借りることができるので、使い勝手がいい方法ですが、銀行にとってはリスクが高い融資なので、財務内容のよい企業でないと、審査が通りにくいということもあります。
契約期間は多くは1年とされ、期間が満了したら更新の手続きを行う必要があります。
財務内容などにより、更新ができない場合は、貸越残高を長期融資に変更し、分割弁済を行うことが多いようです。

・メリット

  1. 必要なときに必要な分だけ借りられる
    事前に決めた上限枠の範囲内で、随時借入・返済ができるため、資金繰りの調整がしやすくなります。
  2. 利息は借入分だけにかかる
    利息は「実際に借りた金額 × 借入期間」に対して発生するため、枠があっても使っていなければ利息は発生しません。
  3. 繰り返し使える
    一度契約してしまえば、繰り返し利用可能。長期的な資金繰りの安定に寄与します。
  4. 急な支払いにも対応可能
    急な仕入れ・支払など、予期しない出費に迅速に対応できるため、企業の信用低下を防げます。

・デメリット

  1. 事前に信用枠の審査が必要
    利用には金融機関との融資枠の設定契約が必要で、企業の信用力・財務状況によっては希望額を設定できない場合もあります。
  2. 金利がやや高め
    通常の証書貸付や手形貸付に比べて、貸越金利が高く設定されることが多いです。
  3. 使いすぎると返済が困難に
    自由に借りられる反面、自転車操業に陥るリスクもあり、無計画な利用は危険です。
  4. 契約期間の更新が必要
    通常は1年ごとなど、契約期間が定められており、金融機関との定期的な更新・再審査が必要です。

ところで、自社が実際に利用できる可能性が高い融資はどれか、これが気になるところでしょう。
しかし、素人目では判断がつかないものです。
もし、近々に融資を受けることを考えているのであれば、実績のある事業融資の専門家に相談してみてください。
手前味噌ですが、当事務所にも元銀行員の事業融資のエキスパートが在籍しており、事業融資を受けるために必要な「コツ」を活かしたサポートを行っております。
完全成功報酬制の「事業融資獲得支援」サービスにてご相談を承っておりますので、どうぞお気軽にご連絡ください。

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