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資金調達の基礎知識

自転車操業に陥る企業の特徴とは?メリットはあるのか?

あまり良い意味で聞かない「自転車操業」という言葉。自転車操業に陥っていると資金繰りにばかり忙しくなってしまうイメージです。今回は、この自転車操業に陥る企業の特徴について詳しく解説していくとともに、メリットがあるとしたらどのようなことものなのかを紹介していきます。

◎なぜ自転車操業に陥るのか?

企業における自転車操業とは、事業者に手元資金の余裕が全くなく、直前の入金によって出金が可能になるような状態を指します。規模の大きい設備投資を行うなど、一時的に大きな出費があった際に発生するとケースするが多いです。工場などの設備を増強したものの、毎月の返済額を上回るだけ利益が出ないと自転車操業に陥ってしまいます。

特に、事業が軌道に乗って急激に売上が増加し、それに伴って必要な運転資金も急激に増えているような場合には、自己資本だけで必要なだけの運転資金を用意するのは難しくなります。そんなときに借入れによって運転資金を調達すると、無事に売上代金が入金されてもその売上を借入金の返済にあてなければなくなります。すると再び手元には資金がなくなり、再び借入れによって運転資金を調達しなければならなくなり……と、自転車操業の状態に陥ってしまうのです。

一般的な目安では、手元資金として3~6か月分の運転資金を確保しておくとよいとされています。半年分の資金が手元にあれば大きな出費や不測の事態が起きてしまってもそこから体制を立て直すための猶予を半年は確保できるということですので、自己資本だけで持ち直せる場合があります。

◎自転車操業に陥るとどうなる?

同じ自転車操業に陥っている状態に見えていても、状況は正反対の場合があります。

上で述べたように、急激な売上増加によって運転資金を借り入れるようになった場合は、あくまでも入金と出金のタイミングのズレによって一時的に手元の資金が不足しているだけです。そのため、これから確保できる利益が増えていくことが明らかであれば、借入金の返済を考慮したうえでもいずれは利益が手元に残るようになっていき、自転車操業から抜け出すことができます。

一方で、売上が減少傾向にあるにも関わらず運転資金を借入れによって調達している場合は、慢性的に不足している営業活動のための資金を借入金で補っている状態なので、借入金の返済を新たな借入金以外で用立てることができず、将来的に大きな利益が確保できる保証がないのであれば、自転車操業から抜け出すことは難しいと言えます。

◎自転車操業にメリットはある?

会社経営にとって、自転車操業もまた一つの経営手法である、という見方もできないわけではありません。

実際、創業間もなく経営が安定していな時期や、一時的に売上が落ち込んだ時期などに自転車操業で持ちこたえた、という経験がある企業は多いのではないでしょうか。状況に合わせてうまく自転車操業を使いこなし経営危機を乗り越えられるということは、経営者として必要な能力かもしれません。

とはいえ、あくまで必要に迫られたときに必要な期間だけ自転車操業を駆使するのであり、基本的には運転資金を自力で確保できるように心がけることが健全な経営方針であるといえるでしょう。「率先して自転車操業を行うメリットはあるか?」という問いに対しては、「基本的にはない」というのが率直な答えです。


中小企業の経営において、一時的に自転車操業に陥ってしまう時期があることは珍しくありません。さきがけグループでは、税務顧問や財務コンサルティングといったサービスを通じて企業の健全な経営をサポートしています。ぜひお気軽にご相談ください。