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経理に役立つ簿記知識

経営状況分析とは何か?そのやり方について

「最近、利益は出ているけど、なんとなく不安」、「会社の経営状況を調べるには何を見ればいいのか分からない」そう悩んでいる経営者の方は少なくありません。そんな不安を感じている経営者の方にぜひ知っておいていただきたいのが、経営状況分析です。

◎そもそも経営状況分析とは?

経営状況分析とは、企業の財務データや業務データをもとに、会社の現在の健康状態を把握し、将来の方針を立てるための分析手法です。もう少しやわらかい表現をすると、「会社が元気かどうか、そしてこのまま進んでも問題ないかをチェックする健康診断」とも言えます。

経営状況分析によって、以下のようなことが分かります。

・会社の財政状態(借金の多さや自己資本の割合)
・営業活動の成果(売上・利益などの推移)
・現金の流れ(キャッシュフロー)
・将来に向けた健全性や成長の見込み

このように、会社の健康診断のように「今、どこが強くて、どこが弱いか」を客観的に確認できるのが、経営状況分析の大きなメリットです。

◎経営状況分析のやり方

1.目的を明確にする

まずは「なぜ分析するのか」をはっきりさせることが大切です。

たとえば、

・資金繰りが心配:現金の流れ(キャッシュフロー)を重視
・利益率が低下している:原価や固定費を重点的にチェック
・銀行に融資を相談したい:財務健全性を確認

目的によって見るべき資料や指標が異なります。

2. 必要な資料をそろえる

・貸借対照表=B/S

「貸借対照表(B/S)」とは、会社が持っている財産(資産)と、それをどうやって手に入れたか(=負債や純資産)を左右に分けて表示します。「持っているもの」と「そのお金の出どころ」が必ず一致する=バランスしていることから、「バランスシート」と呼ばれています。

この「B/S」という呼び名は、英語のBalance Sheet(バランスシート)の略です。

・損益計算書=P/L

「損益計算書(P/L)」は、ある期間(通常は1年間)に、どれだけ売上があって、どんな費用がかかり、最終的にいくら儲けたかが分かります。

この「P/L」という呼び名は、英語のProfit and Loss Statement(プロフィット アンド ロス ステイトメント)の略で、「儲けと損失の一覧表」という意味があります。

・キャッシュフローの確認

利益が出ていても、現金が足りずに会社が潰れてしまう場合があります。これを「黒字倒産」とも呼びます。だからこそ、お金の出入り(キャッシュフロー)をしっかり確認することが、健全な経営には欠かせません。

これらの資料は、顧問税理士がついていれば基本的に揃っていることが多いです。

3. 財務指標で数値をチェック

過去3年分くらいの推移を並べると、成長やリスクが見えやすくなります。

・自己資本比率:30%以上が目安
・流動比率:200%以上で安心
・営業利益率/売上総利益率:同業他社と比較
・総資産回転率:1.0回以上で健全
・売上・利益の推移:3年での増減

4.自社の現状を正確に把握すること

日々の経営では、「何となく調子がいい」「おそらく利益は出ている」など感覚で判断してしまいがちです。

しかし、会社の経営状況を調べるには、数字で確認することが不可欠です。

・売上が伸びていても、利益が出ていない
・キャッシュが足りないのに、黒字になっているケース(いわゆる黒字倒産)

このようなリスクを防ぐには、数字に基づいた現状把握が重要です。

5.問題点を見つけ、改善につなげること

経営状況分析のもう一つの目的は、自社の課題を明確にし、改善策を導き出すことです。これらの指標をもとに、どう改善すべきかを明らかにできます。さらに、経営状況分析は「弱点」だけでなく「強み」も見つけることができます。たとえば、「営業利益率が高い」「自己資本比率が高い」などの強みを活かした戦略を立てることで、競争力を高めることも可能になります。

◎会社の経営状況を調べるには?

売上が上がっていても、原価率が急上昇していれば、それは“利益を削る病気”かもしれません。逆に、利益率が高くてもキャッシュが不足していれば、資金繰り倒産のリスクがあるわけです。つまり、部分ではなく全体を見て判断する目が必要です。

◎経営状況の判断基準は「過去・現在・未来」

経営状況を判断するためには、次の3つの視点をバランスよく見ることが重要です。

過去:業績がどう変化してきたか?
現在:資金、利益、債務など、今の状態は健全か?
未来:このままの経営方針で何が起きそうか?

経営状況分析は、単なる数字合わせではありません。

特に中小企業では「未来の見通し」をしっかり描ける経営者が強く、経営状況分析は、その未来予測の“地図”となる大切な指標でもあります。「なぜこの数字になったのか?」を読み取る力が、経営者には求められます。

さきがけグループでは、決算書の読み方から、経営改善・節税対策まで、「経営の見える化」をサポートします。お困りの際にはご相談ください。