COLUMN

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税務処理の基礎知識

あなたの会社は節税するべき?それともしないべき?

「節税」にはお金を無駄にしないというイメージがあり、「とにかくできるだけ節税した方が良い」と考えている方も少なくないと思います。でもそれは、会社の今後のビジョン次第。目指すべき方向によっては、むしろ節税をしない方が良いケースもあります。

節税するかしないかは、会社を今後どうしていきたいかで決める

節税をした方が良いか、しない方が良いか。あるいは節税するにしてもどのレベルで節税をするか。これらをはっきりさせるには、まず会社を今後どうしていきたいのかを明確にする必要があります。

例えばこれからもっと会社の規模を大きくしていって、いつかは上場を目指したい!という場合は、節税に熱心になるべきではありません。節税というのは利益を減らして税金も減らすのが主な方法です。ただ売り上げはもう確定してしまっているので、利益を減らすには経費を増やすしかありません。つまり節税というのは、見方を変えれば「現時点では必要のないお金を経費として支出する」ということなのです。

一方でこの先、事業を拡大していくためには資金の投入が欠かせません。それも”適切なタイミングで”行うことが大切です。設備投資や社員のモチベーションをアップさせるためのレクリエーションなど、本当にいま必要なものなら構いません。しかし、「将来的に必要になるかもしれない」「税金対策のために使っておくか」くらいの感覚で節税のための投資をすると、必要な時に事業用資金がなくなり、事業拡大ができない!ということにもなりかねません。

また、よく「友人がこんな節税方法をしているのですが、うちでもできますか?」というご相談を受けることがあります。その際に私たちは、「例えそれが法律的には問題なくても、周囲に少しでも不信感を与えてしまうような施策ならするべきでない」というお話をさせていただいております。というのも、将来上場するのなら帳簿上はもちろん、働いてくれている社員や取引先の会社からのイメージも、クリーンでなければならないからです。

それにそもそも、グレーゾーンの節税が行われているような、経営陣に私物化された会社というのは伸びないものです。お客様のために、社会のために、良いサービスを提供しなければならない、という気概で取り組まないと、事業は大きくなりません。

これから会社を大きくして行きたいのなら、目先の節税ではなくもっと先を見据えるべきです。利益が出たら節税を考えるのではなく、多少の税金に目をつぶって将来の事業資金としてプールしておく。また、胸を張って公言できないような節税対策はしない、ということを心に決めておいてください。

これが反対に家族経営の会社で、家族が食べていけるだけの利益があればいいというのなら、どんどん節税して自分たちのためにお金を使うべきだと思います。もちろん法律の範囲内で、というのは大前提です。せっかく節税しても後で追徴課税をもらったら意味がありません。

会社を大きくしたい場合でも、目標を超えた分は節税に回してもOK!

もっとも、会社を大きくしたいからと言って利益の全部を事業用資金に回すべき、というわけではありません。「○年後に上場したい!」といった大きな目標があるのなら、ゴール地点から逆算して「いつまでにはいくらくらいの売上げを達成しておかなければならない」「そのためには事業規模もこのぐらいなければ」といった形で目標を立てられると思います。その目標を超えた分は、節税対策に回しても問題ありません。

もし上場という具体的な目標がなければ、10年後どんな会社にしていたいかを考えると良いでしょう。10年後には売上げ○億、従業員数○百人、というように具体的な数字を掲げることで道筋が立てやすくなります。そこからどんどんブレイクダウンしていき、3か月~1年くらいの短期目標を定めてください。

ただ、せっかく短期目標を立てて、超えた分を節税しようと思っていても、利益の確認に漏れがあると節税対策に回せませんから注意してください。大きな取引の入金日が期末目前にあったけど忘れていて、急に利益が膨らんでしまった、というのは意外とよくある話です。決算ギリギリでは節税できませんから、大きな入金があるときには忘れずに、前もって準備をしておきましょう。


※記事に含まれる法令等の情報は、記事作成時点のものとなります。法令等は随時変わる可能性がありますので、本記事を実務に生かされる際には最寄の税務署か税理士へ確認してください。