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税務処理の基礎知識

非上場株の評価額がどのように決められているか、ご存知ですか?

非上場企業の経営者様の中には、自社の株価にいまどのくらいの価値があるのか、ご存じでない方もたくさんいらっしゃいます。そもそも、非上場企業の株価が決められる方法自体、そこまでメジャーなものではありません。

そこで今回は、非上場株の価額の決め方や、自社の株価を知らないことによるリスクについて解説します。

非上場株の株価はどうやって決まる?

上場株の場合、株価は取引市場における需要によって決まります。需要が高ければ株価は上がり、反対に需要がなければ株価は下がっていく、という仕組みです。

では、取引市場を持たない非上場企業の場合はどうでしょうか。市場を持たないということは、第三者からの客観的な指標である取引相場も存在しないということです。この場合、基本的には同業種の上場企業の株価を参考にする「類似業種比準価額方式」によって株価が決められます。

非上場企業というと中小企業を思い浮かべるかもしれませんが、主要新聞社など「大企業クラスの規模を持ちながら上場していない」企業もたくさんあります。例えば同じマスコミでも、全国紙を発行している新聞社とタウンペーパーを発行している地域密着型の中小企業とでは、規模に大きな差があるため同じ計算式で株価を算出すると実態とかけ離れてしまう可能性が出てきます。というわけで、現在の非上場株式の価額評価方法には、会社の規模に応じた「大会社」「中会社」「小会社」の3つが設定されています。

今回は詳しい計算方法についての説明は省きますが、基本的な計算方法は同じで、「同じ業種で上場している企業の株価」と「自社の純資産」を参考にするのがほとんどです。では「大」「中」「小」で何が違うのかというと、参考にする上場企業の株価と純資産額に対する倍率です。会社規模が大きくなればなるほど、倍率が大きくなり、上場企業により近い株価が算出されるようになります。

実際にどの業種の企業にどのくらいの株価がつけられているのかについては、国税庁のホームページで公表されていますので、ぜひ調べてみてください。

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hyoka/1806xx/index.htm

株価を知らないとどんなことになるの?

これまで自分の会社の株価を気にしたことのある経営者様というのは、そこまで多くないと思います。でも、これは別に悪いことではありません。もちろん知っているに越したことはありませんが、経営が安定している会社にとって、株価というのはそこまで意味を持たないからです。では、自社の株価を知るべきタイミングというのは、いったいいつなのでしょうか?

それは、事業承継を考え始めたタイミングです。事業を譲るということは、自分が持っている株式も一緒に譲るということ。たとえそれが非上場株だろうと、株式というのは立派な財産の一つですから、相続なり贈与なりすれば税金が発生します。

事業承継を考えたタイミングでしっかりと株価について調べておかないと、いざ代替わり、という時にスムーズにいかないことがあります。例えば、中小企業であっても業績がよければ発行済み株式の評価額が億単位になることも珍しくありません。もちろんそれは素晴らしいことなのですが、億単位の資産を承継するとなると、税金は数千万に上ります。税金は現金で支払わなければいけませんから、事業承継を遂行するためには数千万円の現金を用意しなければいけない、ということになります。

税金が払えないかから事業承継に失敗した!なんてことのないよう、いつか事業の承継や売却を考えた際には株価についてしっかりと調べておきましょう。早めに対策を打てば、事業承継税制などを使って税金に支払いを猶予出来るかもしれませんし、様々な税金対策を実行できていれば納税額そのものをグッと減らすことも可能です。

まだ若い経営者さんは、とにかく利益を上げて会社の規模を大きくすることに力を注いでください。自社の株価の心配はまだしなくても大丈夫でしょう。一方、そろそろリタイアを考え始めた、という方はなるべく早くに行動に移りましょう。詳しい株価の算出方法や、具体的な節税対策については、遠慮なく税理士までご相談ください。

※記事に含まれる法令等の情報は、記事作成時点のものとなります。法令等は随時変わる可能性がありますので、本記事を実務に生かされる際には最寄の税務署か税理士へ確認してください。