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コラム
仮想通貨を使った取引には、いろいろなものがあります。法定通貨との交換、仮想通貨同士の交換、物品の購入などなど。今後も活用の幅はどんどん広がっていくことでしょう。
ただ、こうして売買を繰り返すようになると気になるのが損益の計算方法です。そこで今回は、仮想通貨の取引による損益をどのように計算すればいいのか解説していきます。
○移動平均法と総平均法
確定申告を正しく行うためには、その1年間の損失と利益をしっかりと算出しなければなりません。その年の取引において、仮想通貨取得と売却が1回ずつなら話は簡単です。売却価格から取得にかかった費用を差し引いた金額が損益となります。
ただ、1年間に何回も取引を繰り返すと、秒単位でレートが変動していく世界ですから、どうしても1回目と2回目、2回目と3回目と繰り返す度に取得価額・売却価額に差が出てきしまいます。そこで、この差をどのように計算していくのか、というところが今回のテーマです。
仮想通貨取引に関する利益は、国税庁発表の資料によると
【売却価額】-【1ビットコイン当たりの取得価額】×【支払ビットコイン】
で計算されます。(わかりやすいように、式では仮想通貨をビットコインと想定。)
売却価額はわかりやすいですよね。その仮想通貨を売却したときに受け取った金額です。ただ問題は、売却した仮想通貨の取得価額が分からなくなってしまうことです。毎回毎回購入分を全て売却してから新たな仮想通貨を購入するなら明確ですが、前回購入したものが残っている状態で新たに買い足すとなると、時々で取得価額が異なるのでどうすればいいかわからなくなってしまいます。
この状況を解決するために、国税庁が示した計算方法が、「移動平均法」と「総平均法」です。ただ、国税庁は移動平均法での計算が相当だとしています。理由は、総平均法より移動平均法の方がより実態に近い数字が出てくるためです。
もちろん総平均法も「継続して適用することを要件に、総平均法を用いても差し支えない」と国税庁に認められた計算方法です。ただし、一度総平均法で算出すると、次年以降も継続して総平均法を適用しなければなりません。
まずはそれぞれの計算方法を確認しましょう。なお以下に例示されている取引価格は、全て手数料込となっております。
・移動平均法
移動平均法は国税庁が使用を推奨している算出方法で、取引を行うたびに利益や取得価額を出していくのが特徴です。言葉ではなかなかイメージしづらいので、実際に計算していきましょう。
例として
1、1000円で5BTC購入した
2、後日600円で2BTCを追加購入した
3、このうち5 BTCを2500円で売却した
4、さらに後日3BTCを2100円で追加購入した
5、そのうち3BTCを1800円で売却した
というものを考えてみましょう。
移動平均法では取引ごとに計算を行っていきます。
1、の時点の取得価額は1000円÷5BTCで1BTC当たり200円です。
2、の取引では、前回1BTC=200円で購入したビットコインが残っていますから、前回と今回の取得価額の平均を出さなければなりません。計算式は(1000円+600円)÷(5+2)BTCとなり、1桁未満の数字は切り上げで良いので229円となります。
3、では売却しているので、ここで利益が出ることになります。計算式は「【売却価額】-【1ビットコイン当たりの取得価額】×【支払ビットコイン】」ですので、「2500円-229円×5=1355円」。つまり、この時点での利益は1355円ということになります。
4、その後さらにビットコインを買い足しているのでまた取得価額が変わります。
「(229円×2BTC+2100円)÷(2+3)BTC=511.6」つまり最終的な取得価額は512円になります。
5、最後に売却した結果の利益を見てみましょう。「1800円-512円×3BTC=264円」これが今回の取引の利益。3、での利益と合わせて1619円が確定申告するべき利益になります。
・総平均法
一方総平均法は、最後にまとめて取得価額、利益を計算します。平均取得価額は、「(1000+600+2100)円÷(5+2+3)BTC=370円」で、利益は、「4300円-370円×8BTC=1340円」となります。
○どちらがいいかはあなた次第
今回のケースでは総平均法の方が利益が少ない、つまり課税額が少なくなるという結果になりました。このように、取引内容は全く同じなのに計算方法が異なると結果自体も全く異なることがあるのです。
ただ、今回のケースはあくまでも例です。移動平均法を用いた方が、利益が少なくなるケースもありますので、その都度で実際に計算してみないと分かりません。また、移動平均法のデメリットとして「複雑で手間がかかる」ことがよく挙げられますが、今では仮想通貨用の計算ソフトもありますので、手間という意味ではそこまで差はないでしょう。
結論から言えば、あなたにとってどちらが有利な計算方法なのか、というところは実際に計算してみないと分からないため、「どちらがおススメ!」と言い切ることはできません。もちろん、だからと言ってどちらを選んでも変わらないと言っているわけでもありません。実際に計算してみて、有利な方を選んでいただければと思います。
ただし、初年度に使用した計算方法は次年度以降も使い続けなければいけないので、その点だけは留意する必要があります。これから初めての確定申告を迎えるという方は、適当に決めることのないようにしてください。
また、その判断基準が分からない方や、どうやって計算すればいいのかわからないという方、「そもそも確定申告って何?」という方は、税理士にお任せいただければと思います。ヒアリングや試算などを通して、税負担の少ない確定申告をお手伝いさせていただきます。
※記事に含まれる法令等の情報は、記事作成時点のものとなります。法令等は随時変わる可能性がありますので、本記事を実務に生かされる際には最寄の税務署か税理士へ確認してください。