COLUMN

コラム

税務処理の基礎知識

仮想通貨がお給料?そんな時、確定申告は?

万札とビットコイン

昨年2017年は、世の中に仮想通貨が一気に浸透した年でした。代表格のビットコインはわずか1年で最安値88,836円、最高値2,214,558円を記録する乱高下ぶりを示し、多くの通貨が流入したことがうかがえます。
そんな仮想通貨ですが、徐々に法定通貨を代替する動きも出始めています。今回はその一例、「お給料や報酬が仮想通貨によって支払われる」ことについて見ていきましょう。

〇お給料が仮想通貨で支払われるって、可能なの?

まず多くの方が驚かれると思うのですが、お給料を仮想通貨で支払うなんてそもそも可能なのでしょうか?
日本では法律で、お給料は通貨で支払うように、と定められています。ここで言う通貨というのは日本円のことで、当然仮想通貨はこれに当てはまりません。ですが、別に労働契約を結んでいる場合には、通貨以外で支払うことも可能となります。現在お給料を仮想通貨で支払っている、という企業様は、きちんと契約を定めたうえで(支払う側と支払われる側との約束をしたうえで)、そのような制度をとっているのでしょう。

ではこの場合の税金はどうなるのでしょうか?これは企業様によるかもしれませんが、基本は

「日本円で源泉徴収したうえで、該当分のお給料を仮想通貨に換えて支給」
という形です。これなら普通の給与所得者と変わらず天引きで税金が支払われているので、別段確定申告の必要はありません。

ただ、ここで注意しなければいけないことがあります。それは、仮想通貨の値上がりによって年間20万円以上の利益が出た場合には確定申告が必要になる、ということ。一体どういうことでしょうか?

例えば10万円分のお給料を仮想通貨でもらったとしましょう。これを1年間続けると、単純計算で総額120万円分の仮想通貨を手に入れられることになります。これを所持しているだけなら問題はないのですが、例えばこの120万円分の仮想通貨が値上がりによって150万円の価値を持ち、それを全部日本円に変えたとしましょう。すると本来120万円しかもらえなかったはずが30万円も多くもらえましたよね。この差額は税務上、「雑所得」の扱いになり、控除額の20万円を超えているので確定申告が必要になります。

○自分の作品を仮想通貨で買ってもらったら?

仮想通貨の強みは、特定の国や地域が発行しているものではないので、国境を持たないということ。そのため、仮想通貨を使えばこれまで以上にスピーディ且つ簡単に自分の作品を世界中の人たちに買ってもらうことができます。

自分の作品を仮想通貨で購入してもらったら。この場合の税金を考えてみましょう。

定価が日本円で表示されているか、仮想通貨で表示されているかで変わってくるのですが、まずは簡単な日本円表記の場合から解説します。例えば専業のイラストレーターさんが自分のイラストに1枚5000円の定価をつけたとします。それに対して例えば1BTC500円の時に10BTCで買った人が現れました。この5000円分のビットコインは事業収入ですので、税務上は5000円分の事業収入にかかる税金を納めなければなりません。

さて次に定価を仮想通貨で表示していたケースです。こちらは例えば10BTCと表記していたとしましょう。実際に品物が売れたときの時価によって日本円に換算した時の価額は変わってきます。日本円ベースで考えたときの所得、つまりもらえるお金とそのお金にかかる税金も増減するのです。例えば、1BTC=500円なら10BTCで5000円ですが、1BTC=600円の時に売れたら自分の手元に入ってくるビットコインは6000円、もらえるお金も6000円になります。

この仕組みは為替と似ています。両替するタイミングによってもらえる外貨が変動する、ということをイメージしてみると分かりやすいかもしれません。

また、専業のお仕事で受け取った報酬は事業所得ですが、受け取った仮想通貨を運用して利益が出たら、それは雑所得です。その利益に関しては累進課税制度が用いられるため、注意が必要です。

〇仮想通貨でお給料をもらい、その仮想通貨で買い物をする

現状仮想通貨は仮想通貨のままで取引することはできません。売買なり物品の購入なり、いずれにせよ仮想通貨を使う際には日本円に直して価値をはっきりさせてから交換しなければならないのです。

例えば先ほどの1枚5000円のイラストを10BTCで売ったイラストレーターさんが、その10BTCのうち1BTCで500円の商品を買うとします。
このときの取引がちょっと厄介で、仮想通貨での決済が認められている量販店であっても、「1BTC=500円の商品」ではなく、「1BTC=500円=500円分の商品」という道筋をたどらなければならないのです。その時の時価によって、価値が倍の1BTC=1000円になっている可能性がある以上、ある程度はしかたのない仕様だと考えられます。

イラスト販売時には500円分しか価値のなかった仮想通貨ですが、時価が1BTC=1000円となると、1000円分の商品を購入できるようになります。この差額の500円は法律上、立派な雑所得です。こうしたものが積もり積もって20万円を超えるようであれば、きちんと確定申告をしなければいけません。

ここまで読んでお分かりいただけたかと思いますが、日常生活で仮想通貨を使用すると税務面で非常に煩雑な手続きが必要で、お世辞にも環境が整っているとは言えません。運用目的でない限り、不便であるという見解を持っている人が多いのではないでしょうか。ただフリーランスの人などは、報酬で現金と仮想通貨をもらう、ということもあるようです。もしそのようなお仕事を受ける可能性があるのであれば、頭に入れておいた方がいいでしょう。


※記事に含まれる法令等の情報は、記事作成時点のものとなります。法令等は随時変わる可能性がありますので、本記事を実務に生かされる際には最寄の税務署か税理士へ確認してください。