COLUMN

コラム

税務処理の基礎知識

確定申告をしないのは、国からの信頼を裏切るのと同じです。

確定申告がまだ済んでいない状態を指して使われる「無申告」という言葉。
しかしこの言葉の裏側を知ると、日本の税制のしくみやどうして確定申告をしなければならないかが見えてきます。
「確定申告って毎年あって面倒!」
「いっそのこと税務署がすべてを代行してくれればいいのに」
そんな気持ちを抱えている方、必読です。

現在の税制は、信頼されているからこそ

今回のこの記事では、「無申告」という言葉から確定申告の意味やその裏側を紹介していこうと思っているのですが、ところで皆さん、税金に対してどんなイメージを持っているでしょうか。
サラリーマンの方なら「給料から天引きされて手取りが減ってしまう!」、経営者様なら「せっかく自分が努力して作った売り上げなのに強制的に国に取り上げられてしまう」など、ネガティブなイメージが強いと思います。
確かに国家というのは大部分が国民からの納められる税金によって運営されておりその恩恵を私たちは日々受けてはいるものの、いかんせんそれがなかなか見えづらい。
だからせっかく自分が稼いだお金が取られていく、という印象ばかりが残り、ネガティブイメージが先行してしまうのも仕方がありません。
しかしそれは、皆様の意識があまりにも「強制的に取り上げられている」というところに向いているからではないでしょうか。

実は現在の日本の税制は、申告制を基礎に作られています。
これは、民主主義の考えに則り、国民の自発的な納税を求めているからにほかなりません。
ただ、国家の運営のためには資金が必要不可欠で、かつ法のもとには平等でなければならないため、ある程度の目安と平等な制度を定めなければなりません。
これらの考えの上に成り立っているのが現在の税制であり、本来は国民が自分の意志で納税を行う必要があるのです。

そして、この思想を体現しているのが確定申告です。
各人がその年の利益を確定させ、自ら制度に則った納税額を算出しこれを納める。
まさに民主主義国家の税制の在り方そのものと言っていいでしょう。

しかし世の中にはこのようなシステムの税金は多くありません。
ほとんどが自動車税や固定資産税のように、自動的に税額が決定され強制的に取られていきます。
本来であればこうした税金はふさわしくありませんが、こういった細かいところを各々が計算しなければならなくなると国民の負担になりかねません。
税務署の人員も限られているため、こまごまとした部分までに目が行き届かなくなり、不正が起きる原因にもなってしまいます。
したがって、自動車税や固定資産税など税額が簡単に算出できるものは国が計算し自動的に徴収する仕組みを作られたのです。

対して、企業の税金はそれぞれケースバイケースで簡単には税額が算出できません。
できたとしても日本全国津々浦々のケースバイケースを税務署職員が計算しようとすると費用がかさみます。
これでは本末転倒なので、企業の税金は企業自身の納税義務を果たそうという健全な精神を信頼して、自身で納めてもらう形をとっているのです。

ここまでで大まかと分かってもらえたかと思いますが、確定申告というものは国の各企業や個人に対する信頼の証です。
逆に言うと、そんな信頼関係の上に成り立っている納税をするために不可欠な確定申告をしない「無申告」という状態は、国に対する裏切りにほかなりません。

こう考えてみると、納税や確定申告に対するイメージも多少なりとも変わってくるのではないでしょうか。
納税とは国が一方的に国民のお金を取り上げるものでは決してなく、国民の側から国家の庇護を受けるためにその運用資金を納めるものです。
なので「面倒だから」「税金がもったいないから」というような理由で無申告を通すようなことは絶対にやめましょう。
とはいえ個人事業主様で、1年で一番忙しい時期に決算期が当たってしまいどうしても時間が取れない、と言う場合もあるでしょう。
その場合には、税理士に決算業務を依頼するという手段もあります。
国との信頼関係を維持するためにも、検討してみてはいかがでしょうか。


※記事に含まれる法令等の情報は、記事作成時点のものとなります。法令等は随時変わる可能性がありますので、本記事を実務に生かされる際には最寄の税務署か税理士へ確認してください。