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税務処理の基礎知識

決算時の対策について⑤黒字に誘導するための決算対策

「今期は赤字になりそうだが、融資を受けたいので黒字決算になるようにしたい」といったご相談もときにあります。
こうしたケースで黒字決算に誘導できるかどうか、取り上げてみたいと思います。

◎融資を受けるための決算対策

融資を受けようとする際、赤字決算は大きなマイナス材料になります。
そのため、融資を受ける予定のある会社は、融資を引き出すための決算対策が必要になってきます。
そこで、黒字に誘導するための決算対策の主な方法を紹介しましょう。

①前払費用の計上
自動車保険や火災保険などの損害保険料は、通常、支払ったときにその全額を費用として処理しますが、その効果は1年にわたって及びます。
たとえば、3月決算の会社で、1月に自動車保険料12万円を支払ったとします。
この場合、当期の費用となるのは3カ月分の3万円で、残りの9万円は来期の費用となります。
そこでこの9万円は費用として処理するのではなく、「前払費用」として貸借対照表に計上しておくと、この分だけ費用が少なくなり、利益が出るというわけですね。
前払費用に計上できるものとしては、家賃、借入金利子、手形売却損、生命保険料、信用保証料、雑誌などの購読料などがあるので、チェックしてみてください。

②消耗品の計上
消耗品は使ったものだけが費用となり、期末に使われずに残っているものは資産に計上するのが本来のやり方です。
消耗品について、期末にその在庫数量を確認し、在庫として残っているものについては資産として計上し、使ったものだけを費用として処理します。

③債務の整理
会社が計上している未払金、買掛金の中には、支払う必要がなくなったものが残っていることがあるので、チェックしてみてください。
預かり金や仮受金には、支払わなくてもいいものが計上されているケースもあり、これらは雑収入に振り替えれば利益となることも覚えておくとよいでしょう。

④債務免除益の計上
業績のよくない会社では、役員から借入金があるものですから、その債務を免除してもらい、債務免除益を計上することによって、利益を生み出すこともできます。

⑤減価償却費の計上見送り
法人税法の規定では、減価償却費の計上は、強制されているものではありません。
つまり、減価償却費を計上するかどうか、いくら計上するかは会社の自由で、償却した金額について償却限度額の範囲内であれば、費用として認められることになります。

※記事に含まれる法令等の情報は、記事作成時点のものとなります。法令等は随時変わる可能性がありますので、本記事を実務に生かされる際には最寄の税務署か税理士へ確認してください。