COLUMN

コラム

税務処理の基礎知識

決算時の対策について③商品、消耗品などの大量仕入

業績が好調でかなりの利益が見込まれるとき、節税のために商品を大量に仕入れておきたいということもあるでしょう。
これは、節税効果の面でどのようなメリットがあるのでしょうか。

◎商品の大量仕入と節税効果

まず覚えておいていただきたいことは、仕入れた商品がそのまま損金に算入されるわけではないということです。
損金に算入されるのは、当期商品仕入額ではなく、売上原価です。
売上原価は、売上高に対応する商品仕入額。
つまり販売した商品の仕入金額のことですから、期首商品+当期商品仕入高−期末商品により求められるわけです。

したがって、大量に仕入れたとしても、その商品が期末に残っているとしたら、売上原価は増えず、損金に算入できる金額が増えるわけではないので、節税にはならないのです。
また、商品を大量に仕入れて、それを販売してしまえば、それだけ売上総利益が大きくなるので、利益が増えるだけになってしまいます。
ということは、商品をいくら仕入れても、それによって節税になることはないというわけですね。

◎消耗品の大量購入と節税効果

それでは、消耗品の大量購入は、節税効果があるのでしょうか。

購入した消耗品については、期末に在庫数量を確認し、在庫として残っているものについては、消耗品として資産計上し、使ったものだけを消耗品費として損金に算入するというのが原則です。

ただし、事務用消耗品などについては、一般に金額的な重要性が乏しいので、以下の条件が満たされていれば、これらを買い入れたときに損金として処理してよいことになっています。
 ①毎年ほぼ一定数量を購入していること
 ②毎年経常的に消費するものであること
 ③この処理方法を継続して適用すること

これらの規定を利用して、期末に消耗品を多めに購入しておけば、節税になるということですね。

〈資産計上を省略できる消耗品〉
①事務用消耗品/OA用紙、ノート、ボールペン、印刷インク、ホチキス他
②作業用消耗品/手袋、ウエスなど工場などで作業をする際に用いられる部品が典型的なもの
③包装材料
④広告宣伝用印刷物/ポスター、チラシ、カタログ、パンフレットなど
⑤見本品/広告宣伝を目的として消費者に無償で配布するサンプル、試供品

この取扱いは、あくまでも重要性の範囲内で認められているもので、各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費する消耗品などに限られています。
また、収入印紙、郵便切手、新幹線などの回数券、プリペイドカードは、その性格が金銭と同一であると考えられるので、この取扱いの適用対象外となります。

※記事に含まれる法令等の情報は、記事作成時点のものとなります。法令等は随時変わる可能性がありますので、本記事を実務に生かされる際には最寄の税務署か税理士へ確認してください。