COLUMN

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税務処理の基礎知識

会社からの支出の扱い。役員に支払う退職金/社員への値引販売/株主への利益配当

会社と役員・従業員との間で行われるさまざまな取引、そしてそこに発生する税金の問題などは、個々のケースにより異なるので、どうしたらいいのか迷ったり、悩んだりすることもありますよね。
そこで、今回は、「社長の親族である役員への退職金」「会社の商品を社員へ販売する際の注意点」「利益が出たときの株主への配当」の3つのケースを取り上げてみましたので、参考にしていただければと思います。

◎役員退職金は原則として損金になる

役員が社長の親族(母親、兄弟など)であっても、損金となることは変わりません。
ただし、役員退職金のうち、不当に高額な部分の金額は損金にはならないので注意が必要です。
不当に高額かどうかは、次の3点などに照らして判定することになります。
 ①その会社の業務に従事した期間
 ②退職の事情
 ③同種同規模の他の会社の役員退職金の支給状況

適正な役員退職金の算出のしかたとしては、功績倍率法が一般的です。
 ●役員退職金=最終役員報酬月額×勤続年数×功績倍率
功績倍率は、役員の会社への貢献度で、創業社長で2.5倍~3倍程度、普通の役員であれば、1.5倍~2倍程度であれば認められるようです。

◎自社製品を値引して社内で販売する際の注意点

自社製品を無償で提供、あるいは低額で販売した場合、現物給与となり源泉徴収の対象となります。
現物給与部分は、会社が通常の価格で販売し受け取るべき金額と、役員や従業員から実際に受け取った金額の差額です。
もし、無償で提供したのであれば、通常の販売価格分が現物給与となるわけですね。
従業員の給与であれば、損金算入ができますが、役員は事前に届け出ていない限り、役員賞与となり、損金不算入となります。

ただし、値引き後の販売価格が会社の取得価額(仕入)以上であり、一般に対する販売価額のおよそ70%以上であれば、現物給与として課税しなくてもよいとされています。
値引率は、役員や従業員に対して、全員一律でなくてもよいし、数量については、一般の消費者が家事のために通常消費する程度の範囲内であれば、特に問題はないでしょう。

◎株主への利益の配当について

会社は、利益が出ているからといって、株主に必ず配当しなければいけないというわけではありません。
会社法の規定により、配当を行うかどうかは、株主総会の決議で決めることになっているからです。
税法上でも、配当をしないことについて、まったく問題はありません。
「株を購入=配当」と認識されがちですが、配当とは本来、株主に当期純利益が還元されることをいうのですね。
もし配当されない当期純利益があっても、それがきちんと運用され、会社の成長のために使われていることこそが重要なのです。

※記事に含まれる法令等の情報は、記事作成時点のものとなります。法令等は随時変わる可能性がありますので、本記事を実務に生かされる際には最寄の税務署か税理士へ確認してください。