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消費税と経理実務

スーツを経費で落とす方法は実際にあるのか経営者やサラリーマンの疑問にお答えします

税理士に寄せられる質問の中で意外と多いのが、「スーツを経費で落とせるのか」という疑問。

スーツは仕事をする上で必要なものであるともいえるが、実際のところ落とせるのかどうかがわからないという方も多いです。

今回は、スーツを経費で落とす方法は実際にあるのかについて解説していきます。

◎社長のスーツ代は会社の経費になるのか

結論から言うと、社長のスーツ代を会社の経費として落とすのは難しいといえます。

ビジネスを行う上で、スーツが必要不可欠であるという方も少なくはありません。しかし、スーツには冠婚葬祭などを含めたプライベートでも着用することができてしまいます。

そのため、経費として認められないケースが一般的で、会社の経費で社長のスーツを購入した場合には現物支給の賞与として扱われ、かえって税額が増えることにもなりかねません。

一方で、業務中にのみ着用するような制服や作業服などは会社の経費に算入することができます。

スーツを会社の経費で落とすためには、スーツを会社の事務所で保管して業務以外で着用していないことを主張できるようにしておくことなどが必要です。また、事業で使用する日数とプライベートで使用する日数などの基準で按分することで経費にできることがあります。

例えば、1週間7日のうち5日間は事業での使用、2日間はプライベートであればスーツ代の5/7を経費に算入するなどの方法が考えられます。

経費で落としたスーツ代は税務調査でも指摘されやすい部分なので、経費に計上できる合理性を主張できることが大切です。

◎個人の経費として計上できる場合も

ここまでは、スーツ代を会社の経費として計上したい場合について解説しました。

一方で、「特定支出控除」という制度を利用することで、スーツ代を個人の経費として申請できる場合があります。勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費)、通勤費、転居費など、6つの科目に関して、会社から補助がなく、給与支払者による証明があれば給与所得の必要経費として控除されます。スーツについても、勤務先で着用が慣行になっているものについては特定支出として認めらます。

◎そもそも被服費は経費で落としにくい

衣服は誰もが必要とするものであり、趣味嗜好によって必要となる種類や数量、耐用年数などが異なるため、一般的には家事費として考えられ、経費にするのは難しいケースが多いです。

過去には、大学教授が「スーツ購入費用が必要経費である」と主張し退けられた判例(京都地判昭和49年5月30日判決)も存在します。

ただし、判決の中では、「勤務上必要とした部分を、他の部分と明瞭に区分することができるときは、当該部分の支出は必要経費になると認める余地がある」とも述べられています。そのため、事業に関連する部分とプライベートの部分を明確に区別することができれば事業分を経費で落とせると考えられます。

税務においては、「社長にはビジネスとプライベートの境目はない」という考え方は通用しないので、経費計上したい支出については事業への必要性を主張できる必要があります。

「この支出は経費として計上できるのか」「事業へ必要と主張するためにどんな書類を保管するべきか」などが不明な際には、税理士へ相談することがおすすめです。

さきがけ税理士法人では、これまで培ったノウハウを踏まえて、経費計上や節税対策に関しても適切にアドバイスいたします。まずはお気軽にご相談ください。