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経理に役立つ簿記知識

経費で何でも落とせると思っていませんか?経費で落とすメリットとデメリットを解説

会社にとっては決算、個人事業主にとっては確定申告の時期が近づいてくると、「どこまで経費に入れるか」というご相談をよくいただきます。中には、業務に関する費用ならば、すべて経費で落とせる……という勘違いをしている方も少なくありません。実は、業務に関わる費用でも、経費で落とせる費用と落とせない費用があります。

この勘違いを解消するためには、「経費とは何か」をしっかりと理解することが一番の近道です。経費を考える上での原則は「売上を上げるために直接的に必要なもの」。まずは、この大原則をしっかりと頭に入れ、経費について勉強しましょう。

経費でよくある「勘違い」

よくある勘違いとしてあげられるのは「経費で落とすからタダ」。確かに、会社員から見ると自分のお財布のお金は減っていないので、タダという認識は間違いではないように感じます。しかしながら、フリーランスや事業体のお財布から見ると、経費といっても負担するのは自分自身です。つまり、経費を使った分だけお金はしっかりと減ります。会社だった場合は、会社の利益が減る、ということですね。

ほかにも、「領収書・レシートがあれば何でも経費として落とせる」というのもよく聞く勘違いのひとつに挙げられます。冒頭でも申し上げたとおり、経費の大原則は「売上を上げるために直接的に必要なもの」です。当然のことながら、なんでもかんでも経費で落とせるわけではありません。

経費で落とすメリットとデメリット

経費で落とすことのメリットは「節税ができる」ことです。法人の場合は法人税の減額、個人の場合は所得税の減額が見込めます。

例えば、利益が100万円の会社があるとします。経費を何も使わなかった場合、仮に法人税率が40%だとすれば、

利益100万円×税率40% = 法人税40万円

となり、会社に残るキャッシュは60万円です。

しかし、例えば経費として5万円使った場合、利益は95万円となるので、

利益95万円×税率40% = 法人税38万円

となり、会社に残るキャッシュは57万円となります。経費で落とすことにより、2万円の法人税の節税ができていることがおわかりいただけるでしょう。


しかし、お気づきかとは思いますが、節税はできていても経費が増えたことにより3万円キャッシュが減っています。経費を使えば使うほど、キャッシュも少なくなるという点はしっかりと認識しておきましょう。

とはいえ、5万円分の経費は会社の資産でもあります。見方を変えれば、

会社に残るキャッシュ57万円+経費分5万円分 = 資産62万円分

となり、62万円分の資産と考えることも可能です。どちらのケースが良いかは一概に言えることではなく、会社の経営状態に合わせて選択すると良いでしょう。

経費で落とすことの明確なデメリットは「出費が増える」ことにあります。いくら節税ができるからといって、経費で落とすことはお金を消費することと本質的には変わりません。なんでもかんでも経費で落とそうとすると、会社にとって最も大事なキャッシュが少なくなり、赤字決算になる事もあります。事業体が赤字収支の場合、金融機関から見放され融資をしてもらえなくなる……という可能性も否定できません。

また、税務署に脱税を疑われ税務調査の対象となる事もあります。場合によっては法人税の追徴課税、加算税、延滞税といったペナルティを課せられる可能性もあるのです。

経費で落とす金額は、大きければ大きいほど節税に繋がります。しかし経費で落とすと節税ができるからと考えなしに経費として使っていると、会社のキャッシュフローに響くだけでなく、脱税の疑いがかけられ税務調査の対象となってしまうことも。大事なのは、経費とは”何か”をしっかりと理解し”賢く”使う事です。経費の判断に迷ったら、税理士にぜひ相談してください。