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相続対策・相続税務の基礎知識

遺言執行者の選任は必要?メリットや役割について

 相続をスムーズに行うために有効なのが「遺言書」です。その遺言書に「遺言執行者」を指定しておくと、さらに円滑に進めることが期待できます。

 あらかじめ遺言執行者を選任しておくことのメリットはなんでしょうか。また、たとえば遺言執行者が死亡するなど、遺言執行者がいなくなってしまった場合はどうなるのでしょうか。今回は、遺言執行者の役割やどのような仕事内容なのかを解説いたします。

◎遺言執行者とは

 遺言執行者とは、遺言者が亡くなった後に遺言を実行する人のことです。必ずしも遺言執行者を指定しておく必要はありませんが、指定しておくことで遺言の執行をスムーズに行える可能性が高くなります。相続争いなどをできるだけ避けるためには、遺言書を作成し、その際に遺言執行者も指定しておくと良いでしょう。

 また、遺言書に遺言執行者が指定されていなくても、家庭裁判所に申し立てを行い、後から遺言執行者と選任することも可能です。

◎遺言執行者の義務と権利

 ただ、遺言執行者は遺言を執行する者である、とはされていたものの、具体的にどのような義務や権限を持つかが明確になっていませんでした。そこで、相続に関する法律が2018年に改正され、遺言執行者の義務と権限が明文化さることになります。

 その改正で、遺言執行者には「遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない」という義務を持ち、「手続きのために必要な一切の行為を行うための権利と義務を有する」ことになりました。遺言執行において、遺言執行者が非常に強力な権限を持つことが明確にされたのです。

 具体的には、相続財産目録の作成、各金融機関での預金解約手続き、法務局での不動産名義変更手続きなど、遺言の執行に必要なすべての行為に対して手続きを進める権限を持っています。同時に、遅滞なく行う必要があるという義務も課せられました。

◎遺言執行者をあらかじめ指定しておくことのメリット

 遺言執行者をあらかじめ指定しておくメリットには、主に以下の3つあります。

・無用な相続争いに発展しづらい
・金融機関への相続届等に相続人全員の署名が必要なくなる
・不動産を遺贈する場合でも、相続人全員の署名が必要なくなる



例えば、相続人間で意見が対立している場合でも、遺言執行者が選ばれていたら、執行者単独で手続きを行えるため、相続トラブルが発生し難くなるでしょう。

 また、金融機関や、不動産に関する手続きも、相続執行人を選んでおかないと、非常に煩雑です。既定の書類に全員で署名、実印を押印、そして印鑑登録証明書を提出しなければいけません。相続人が多数居て、様々な地方に離れて居住している場合などは、特に手続きが大変になります。遺言執行者を選んでおくと、それらの手続きを1人で済ませられるため、スムーズに相続手続きが行えるでしょう。

ただ、遺言者は誰でもなれるわけではなく、未成年者、破産者は遺言執行者になれません。相続の当事者である相続人でも遺言執行者になれますが、公平に相続手続きを進められる人を選ぶ必要があります。その点を踏まえると、すべての相続人が不満を持たないよう に相続手続きを行うためには、税理士などの利害関係のない専門家に任せる方が良いでしょう。

◎指定されていた遺言執行者が死亡した場合は

 遺言者より先に遺言執行者として指定されていた人が亡くなってしまった、遺言執行中に遺言執行者が亡くなってしまったなど、遺言執行者が、遺言執行の完了する前に亡くなってしまった場合はどうなるのでしょうか。

・遺言者が死亡する前に、遺言執行者が亡くなってしまった場合

まず、遺言執行者の前提として、遺言者が死亡して遺言執行者に指定された人が承諾しない限り、指定された人に遺言執行者としての権利や義務は発生しません。そのため、遺言者が亡くなる前に大きな支障が生じるケースはそれほど多くないと考えられます。

しかし、このままだと遺言執行者が不在になってしまうので、遺言者が遺言書を書き換えて、新たに遺言執行者を指定した方が良いでしょう。

・相続開始後に遺言執行者が死亡した場合

遺言執行者が亡くなった場合、その地位は遺言執行者の相続人に受け継がれることなく、喪失します。その後相続人などが必要に応じて、家庭裁判所に遺言執行者の選任の申立てを行い、新たな遺言執行者を選任することが可能です。

しかし、一旦相続が始まってしまってから遺言執行者が亡くなると様々な後処理をしなければならず、適切な遺言執行が困難になります。「遺言執行者を複数人指定する」、「予備的な遺言執行者を指定する」「税理士法人などの法人を遺言執行者に指定する」などの対策を講じることで、リスクを減らすことができるでしょう。

遺言執行者を選任することで、相続トラブルを回避できる可能性が上がり、相続手続きも非常にスムーズに行うことができます。しかし相続の手続きは煩雑で、なかなか執行を任せる人が見つかりづらいのも事実です。

 そのようなときは税理士などの第三者である専門家への依頼をご検討ください。さきがけ税理士法人でも「相続手続支援センター」にてご相談を承っております。お気軽にご連絡ください。