COLUMN

コラム

税務調査への対応策

税務調査官は重加算税を狙っている?

税務調査の際につけられる罰則として一番重いものが重加算税。
ただ金額的な面だけでなく、重加算税をつけられてしまうと多くのデメリットがあります。
そこで今回は絶対に避けたい重加算税についてご紹介します。

◎重加算税とはどういった罰金か

重加算税について解説する前に、税務調査を受ける際に意識してもらいたいことを伝えます。
それは、皆さん忘れがちなのですが、税務調査官もサラリーマンである、ということ。
正義の味方でもなければ冷徹な審判員でもありません。
ノルマを課せられ上司からの評価を気にする一般的なサラリーマンと、変わらないのです。
ではそんな税務調査官にとって、重加算税というのはどのような存在なのでしょうか。
一言で言ってしまえば、それは「評価ポイントの高い税金」です。
査定も気になる税務調査官としては、ぜひとも狙っていきたい税なのです。
まずはこのことを認識しておいてください。

重加算税というのは架空請求や裏口座の作成など、税の申告に際して意図的な隠ぺいが認められた場合につく税金です。
このような罰則の性格を持つ税金には、重加算税のほかに無申告加算税や過少申告加算税などがあり、合わせて付帯税と呼ばれています。
その税率は過少申告加算税が10%、無申告加算税が15%なのに対し、重加算税は35%(無申告の場合は40%)と跳ね上がります。
なお無申告加算税や過少申告加算税と重加算税が重複することはあり得ません。
なぜなら、「無申告加算税、過少申告加算税が課せられるような状況が意図的に作り出された」と判断されたときに発生するのが重加算税だからです。

重加算税がつくことによるデメリットは税率だけではありません。
重加算税というのは意図的な不正行為によって認定されることは先ほどお話しした通り。
過失での申告ミスなら次からは同じミスをしないために正確な申告を心がけよう、となりますが、支払う税金をできるだけ少額にしたいがために意図的に不正行為を行った場合であれば、常習性が疑われてもおかしくないですよね。
そのため税務署からもマークされてしまいます。
要はブラックリスト行きです。

ブラックリストにのると具体的にはどんなことが待っているのかというと、税務調査官からの調査が厳しくなります。
最初から疑念の目を向けられてしまうわけです。
そうなると徹底的な裏どりや、漏れのない書類の管理が求められるようになり、日ごろの負担は計り知れないものになります。
それに伴い調査官との煩雑なやり取りも多くなるでしょう。
また調査の間隔も短くなります。
初めて重加算税が課せられた場合には、そこから5年以内には確実に次の税務調査の通知があると思っていてください。

このように見てみると、重加算税というのは金銭的に追徴された分と多額の罰金を払えば済む、という問題ではないことがわかりますね。
本来の事業にまで支障をきたしてしまう可能性もあるので、意図的な不正は絶対にしないようにしましょう。

◎税務調査官とのやりとりの中で、重加算税を無理矢理つけられることも

しかし中には査定のポイントを得るために、半ば強引に重加算税をつけてこようとする調査官もいます。
もちろん数で言えば少ないのですが、難癖に近い形で意図的な不正を作り上げようとする調査官が、確実に存在するのです。
こういう時には調査を受けている経営者をうまく丸め込むために、わざと難しい専門用語を使ってきたりします。
経営者自身もそこまで税法に詳しいわけではないので、なんだか気圧されていくうちに、意図的な不正を認めてしまうこともあるのです。

それから税務調査の際には電話での調査と実地調査の2種類があるのですが、実地調査の後の電話調査で、納税者と税務調査官の間で「交渉」が始まることがあります。
この時になんとか重加算税をつけようとしてくる調査官もいます。
例えば交際費について、実地調査の時に「これは交際費としては認められない。個人支出だ」と経費申請を否認されたしまったものが数件あるとしましょう。
またそれとは別に、ミスから起こった過少申告税が発生していたとします。
この時税務調査官が、この過少申告税を意図的に行ったものだとして重加算税を適用してもいいなら、この交際費の経費申請を認めよう、という取引を持ち掛けてくるのです。
この場合、重加算税を課したとして増える税金よりも経費申請によって減る税額のほうが大きいことが条件になります。
提案を持ち掛けられた経営者からすれば、とりあえず支払う税金は少なくなるし目先の負担は軽くなるから重加算税を認めてしまおうか、という気持ちになってもおかしくないですよね。
そして当然調査官はプロですから、そういった方向に誘導する術も知っています。
しかしこれは長期的に見れば確実に納税者側が不利になります。
下手にブラックリスト入りしてしまうと、痛くもない腹の内を探られる税務調査がこの先幾度にもわたって、それも頻繁に行われることになるのですから。

まとめると、重加算税というのはどんな状況であっても避けるべきものになります。
もちろん自身に不正の自覚がある場合は別ですが、そうではない難癖に近い指摘や交渉による重加算税認定はこちらの損にしかなりません。
しかし税務調査官というプロの技から素人が逃れるのは正直難しいです。
口車に乗せられて重加算税を課せられてしまう前に、信頼できる税理士に相談するのが一番安全な道と言えるでしょう。