COLUMN

コラム

税務調査対応の基礎知識

訴訟の概要と現状について

前回は不服申立ての現状と請求認容の状況について紹介していきましたが、今回は訴訟についての概要とその現状を紹介していきますね。

◆訴訟の概要

租税に関する訴訟事件は毎年数多く発生しております。内容としては行政事件訴訟法に基づく処分の取消しや裁判の取消し、無効確認、不作為の違法確認などを求めて
起こされます。また損害賠償請求などの民事訴訟をはじめ滞納処分の一環として国が原告となって提起する各種の民事訴訟もあります。またこれらの判決結果の中には大きな影響力を行使するものもあります。ちなみに国税当局の担当部署ですが、各国税局及び沖縄国税事務所の課税部と徴収部に国税訟務官室があり、これらが租税に関する訴訟事務に従事しています。

◆現状

訴訟の現状について見ていきましょう。まず訴訟の発生件数ですが、これはおおむね300~400で落ち着いています。平成23年度は391件、平成24年度は340件となっていました。しかし少し前の平成15年と16年はそれぞれ発生件数が特に大きい年になっています。
 ・平成15年=492件
 ・平成16年=552件
これはこの時期にストックオプションに関する事件が数多く発生したためです。
このようにある事件がキッカケとなって訴訟が多発することもありますが、基本的には大きな世の中の動きがない限り、件数は安定しています。

◆訴訟の終結の内訳

最後に訴訟の終結の仕方の内訳について見ていきましょう。
以下は平成11年度から20年度までの10年間に終結した課税関係訴訟3212件の内訳になります。
 ①取り下げ8.3%(267件)
 ②却下等4.6%(146件)
 ③国側全部勝訴74.8%(2404件)
 ④国側一部勝訴5.5%(178件)
 ⑤国側敗訴6.8%(217件)
これを見れば圧倒的に国側全部勝訴が多いことが分かりますね。訴訟が一部でも認められる割合ですら12.3%です。訴訟が認められる確率は極めて低いと言えるため、訴訟を起こすのであれば相応の準備が必要になります。訴訟のハードルが極めて高いことは認識しておきましょう。

※記事に含まれる法令等の情報は、記事作成時点のものとなります。法令等は随時変わる可能性がありますので、本記事を実務に生かされる際には最寄の税務署か税理士へ確認してください。