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コラム
資本金の減資を行うときの一般的な流れは次のようになります。
株主総会の特別決議(減資の承認)
↓
債権者の保護手続き(官報公告、催告)
↓
異議申立期日
↓
減資効力発生日
↓
変更登記
資本金の減資に伴い、株主に対して金銭などを交付する場合を「有償減資」といいます。有償減資では、株主総会で「減資」と「剰余金の配当」を同時に決議します。さらに減資の効力発生日以後に、剰余金の配当として金銭などの交付を行うことになります。
▶ケーススタディ
例)資本金を1000万円減少させ、配当を800万円支払った。この場合の会計処理はどうなるか。
【仕訳】
(借)資本金 1000万円 (貸)現金預金 800万円
(貸)その他資本剰余金 200万円
(資本金および資本準備金減少差益)
・メリット
1. 資本効率の改善(ROEの向上)
資本金や純資産が減ることで、自己資本利益率(ROE)や総資産利益率(ROA)が向上し、企業の収益性が高く見えるようになります。この状況は投資家にとって、魅力的な企業指標になります。
2. 余剰資金の有効活用
利用予定のない資金を抱えたままにせず、株主に返還することで資本効率を高めることができます。
3. 配当政策の柔軟化
減資によって資本金や利益剰余金が減ると、将来の配当余力が広がることがあります。
4. 欠損填補とセットで財務改善が可能
欠損補填を目的とした「無償減資」と組み合わせて、有償減資を行うことで、バランスシートのスリム化と株主還元の両立が可能です。
5. 税務上の影響が小さい場合もある有償減資による払戻しは、原則として株主にとって配当ではなく「譲渡所得」扱いになるため、配当に比べて課税額が低くなるケースがあります(要件により異なる)。
無償減資には、次の2つの方法があります。
①資本金を減少させてその他資本剰余金を増加させる場合
「資本金」を「その他資本剰余金」に振り替えるので、株主資本等変動計算書においても、変動事由は資本金の減少となります。資本金の欄で減少させ、「その他資本剰余金」の欄で増加させて記載します。
▶ケーススタディ
例)資本金のうち、2000万円を減額し、同額を「その他資本剰余金」とした。この場合の会計処理はどのようになるか。
【仕訳】
(借)資本金 2000万円 (貸)その他資本剰余金 2000万円
(資本金および資本準備金減少差益)
②資本金の減少を欠損補填に充当する場合
資本金の減少を欠損補填に充当するということは、資本金の減少額で繰越利益剰余金のマイナス部分を補填するということになりますね。
・メリット
1. 今後の財務戦略に活用できる
「その他資本剰余金」は将来的に「利益剰余金」に振り替えられる可能性があるため、将来の配当原資や欠損補填に使える柔軟な資本になります。
2. 形式的な減資なので、企業イメージへの影響が小さい
欠損補填を目的としないため、「経営が悪化している」と見なされにくい。
3. 税務上の資本金等の額が減る
外形標準課税(中堅企業向けの事業税)の対象額が減ることがあり、税負担が軽減される可能性があります(資本金1億円未満への調整など)。
4. 将来の組織再編時に有利に働く
資本金等の額が減ることで、組織再編税制の適用などがしやすくなるケースも。
▶ケーススタディ
例1)資本金のうち2000万円を減額、同額を欠損補填に充当した。この場合の会計処理はどのようになるか。
例2)欠損額1500万円で、資本金を2000万円減少させたときの会計処理はどのようになるか。
【仕訳】
例1
(借)資本金 2000万円 (貸)繰越利益剰余金 2000万円
例2
(借)資本金 2000万円 (貸)繰越利益剰余金 1500万円
(貸)その他資本剰余金 500万円
(資本金および資本準備金減少差益)
上記ケーススタディのその2では、欠損補填を超える500万円は、「資本金および資本準備金減少差益」として「その他資本剰余金」に計上されることになりますね。
・メリット
1. 貸借対照表が健全化される
資産より純資産が少ない(債務超過)状態の改善や、利益剰余金のマイナスを減資によって解消でき、見た目の財務体質が良くなる。
2. 将来的な配当が可能になる
欠損を補填し、利益剰余金のマイナスが解消されることで、配当可能利益を確保でき、配当実施のハードルが下がります。
3. 金融機関や投資家からの信用改善
バランスシートが健全化されるため、融資審査や株主の印象改善につながることがあります。
4. 将来の利益と相殺されにくくなる(税務戦略)
法人税では損金不算入の繰越欠損金と異なり、会計上の累積損失を帳簿から取り除けるため、財務数値の透明性が増します。
※記事に含まれる法令等の情報は、記事作成時点のものとなります。法令等は随時変わる可能性がありますので、本記事を実務に生かされる際には最寄の税務署か税理士へ確認してください。