COLUMN

コラム

決算書の作り方・ひな形

有価証券の評価差額が発生した場合の会計と税法での処理方法

「売買目的の有価証券」は、時価を貸借対照表価額としています。そこで実務的には「有価証券評価損益一覧表」を作成して、評価損益を算定することになるわけですね。
この一覧表の時価金額合計欄が、有価証券(売買目的分)の貸借対照表価額です。
なお、評価損益は、次の仕訳を通じて、損益計算書に反映されます。

【ケーススタディ】

売買目的の有価証券の評価益が発生する場合と、評価損が発生する場合の会計処理は?
(仕訳)
①有価証券評価益が発生する場合
(借)売買目的有価証券×× (貸)有価証券運用損益××
②有価証券評価損が発生する場合
(借)有価証券運用損益×× (貸)売買目的有価証券××

「満期保有有価証券」の場合は、取得価額で評価しますが、取得時に券面額より高い、あるいは低い価額で購入した場合で、その差が金利相当額と認められるときは「償却原価法」によってその差額を取得原価に加減し、その額を損益計算書に計上します。

【ケーススタディ】

発行と同時に95円(単価)で10万円の社債を取得。期間5年。取得時と期末日の会計処理は?
(仕訳)
①取得時
(借)満期保有目的債券 95.000 (貸)現金預金 95.000
②期末日
(借)満期保有目的債券 1.000  (貸)有価証券利息 1.000
上のケースでは、取得時の社債の取得価額は9万5000円。5年後の満期時は10万円になります。そこで取得時と満期時の差額を5年で割って「有価証券利息」の1000円を計算します。
償却原価法によらない場合は、券面額と取得時の金利差が満期時に一度確認できるため、期間損益計算が歪められてしまうのですね。そこで、毎決算期ごとに金利差の部分を経過期間に対応して認識し、その結果を損益計算に取り込むようにします。

「その他有価証券」のケースはどうでしょうか。

中小企業では、一般的に「その他有価証券」を保有していることが多いようです。よほど、株好きな経営者でもない限り、株式を保有するとすれば、取引の関係から取引先や金融機関の株式の保有を要請されてということが多いからです。従来、これらの有価証券は、取得原価で評価を行っていたことが多いように思われますが、中小企業会計指針では、原則、時価評価であり、その保有額が多額でなければ取得原価で評価することができるとしています。


具体的には、次のように評価を行います。
①全部純資産直入法
評価損益のすべてを純資産の部に計上する方法です。評価損益の税効果相当額を差し引いた額を、純資産の部に直接計上します。
②部分純資産直入法
評価損が生じた場合、損益計算書に評価損を計上する方法です。
なお、①②の評価差額は、翌期首に反対仕訳により処理を行い、戻さなければなりません(洗替法)。

※記事に含まれる法令等の情報は、記事作成時点のものとなります。法令等は随時変わる可能性がありますので、本記事を実務に生かされる際には最寄の税務署か税理士へ確認してください。