COLUMN

コラム

決算書の作り方・ひな形

「中小企業の会計に関する指針」に基づく計算書類の作成方法

株式会社の会計について

株式会社の会計は、会社法の中で、「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする」とされています。さらに、会社計算規則により、適時に正確な会計帳簿の作成と計算書類(株式会社の場合、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書及び個別注記表)の作成が義務づけられています。

この一般に公正妥当と認められる企業会計の「慣行」のひとつとして、中小企業の会計指針があります。こちらの指針では、中小企業の特性を考慮した簡便的な方法が設けられている場合もあります。また、会計実務では、具体的な規定が会計指針に定められていないような場合、一定の条件のもと、法人税法で定める処理(税法基準)が採用されています。法人税法では、損金経理要件や、損金算入に関する限度額規定が設けられているので、税法上の有利不利を判定してから、会計処理を行う税法基準によって計算書類が作成される傾向にあるようです。

どのようなときに税法基準で会計処理をすることができるのかを見てみましょう。

以下の場合には、法人税法で定める処理を会計処理として適用ができます。

①会計基準がなく、かつ、法人税法で定める処理に拠った結果が、経済実態をおおむね適正に表していると認められる場合
②会計基準は存在するものの、法人税法で定める処理に拠った場合と重要な差異がないと見込まれる場合

実務的には、貸倒引当金や減価償却費を計算する際の耐用年数や残存価額などのケースが該当します。
本来、法人税は、適正な会計基準に従って作成され、株主総会で確定された利益(確定決算主義)を基礎として税務上の調整を行い、課税所得や税額を計算する仕組みになっています。


そこで実務的には、税務上の調整を簡素に行いたい場合、法人税法上の規定にもとづいて会計処理をするケースもあるのです。しかし、これでは適正な財政状態や経営成績をあらわすという本来の会計の目的から反れてしまう場合もありますね。そのため、税法基準にもとづく場合には、中小企業会計指針で一定の制限をつけているというわけです。

※記事に含まれる法令等の情報は、記事作成時点のものとなります。法令等は随時変わる可能性がありますので、本記事を実務に生かされる際には最寄の税務署か税理士へ確認してください。