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事業承継の流れと基礎知識

株式の後継者への集中が困難な場合に、他株式の議決権を制限する方法①種類株式の活用と無議決権株式

今回は株式の後継者への集中が困難な場合に、他株式の議決権を制限する方法をご紹介します。

例えば、Aさんは会社を経営しており、90%の株主でもあります。家族は妻と長男・長女がいますが、将来は長男を後継者にしたいと考えています。自分の保有している株式を長男に集中させるのが困難な場合、長男以外の株式の議決権を制限してしまうことは可能なのでしょうか。

結論から言うと、それは可能です。そのための手法として会社法に規定されている様々な「種類株式」を活用することが考えられます。種類株式とは、株式会社が剰余金の配当その他の権利の内容が異なる2種類以上の株式を発行した場合のその株式をいい、利益の配当や議決権などで他の株式と異なる取り扱いをするものです。

◎種類株式の活用

事業承継を行うにあたり、すでに分散されている株式を買い取り後継者に集中させることができれば、そのような方法をとることが一般的には望ましいと言えます。しかし株式の買取価格が高額であり、さらに株式の分散が著しい場合にはそのような方法をとることは困難ですよね。そこで現在の株主に株式はもってもらったまま、議決権を制限する方法をとることにより経営権を確保することを考えていくことが必要です。

◎現在の株式を無議決権株式にしてしまう方法

①まず、従来発行されている普通株式の他に「完全無議決権株式」を発行する旨の定款変更をして「種類株式発行会社」にします。ここで完全無議決権株式の発行枠をつくります。

②次に、発行されている普通株式に「全部取得条項」(会社が株主総会決議に基づいてその全部を取得できる旨の条項をいいます)を付する定款の変更をします。これによって従来発行されていた普通株式は「全部取得条件付種類株式」に転換されます。この時に反対株主は株式買取請求権の行使をすることができますので、反対株主に対してだけは株式買取の対価として現金の支払いが必要になります。

③その後、全部取得条項付種類株式にある全部取得条項を発動し、全部取得条項付種類株式を会社が全部取得し、その取得の対価として完全無議決権株式を交付します。この時に反対株主は株主総会議決の日から20日以内に、裁判所に対し取得対価の決定の申立てをすることができます。

④このような手順を踏むことにより、会社の株式はすべて「完全無議決権株式」だけになるので、同時にオーナーに普通株式1株を時価発行します。

⑤この結果、この会社は完全無議決権株式と普通株式1株とを発行する会社になります。

※記事に含まれる法令等の情報は、記事作成時点のものとなります。法令等は随時変わる可能性がありますので、本記事を実務に生かされる際には最寄の税務署か税理士へ確認してください。

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