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相続対策・相続税務の基礎知識

「生産緑地」と相続税の納税猶予の仕組み・適用適否の判断

相続税の納税猶予の仕組みと適用適否の判断について

例えば、農業を営んでいたAさんの父が亡くなり、長男であるAさんが不動産のほとんどを相続し、Aさんの弟にはできるだけ現金をと考えています。しかし不動産のほとんどは生産緑地で、Aさんがもらえる現金はあまりありません。Aさんが農業を引き継ぐので、相続税の納税猶予を使えば相続税の負担も小さくなるのですが、今後の農業による収入も期待できません。生産緑地を解除すれば納税猶予が使えないため相続税が高くなってしまうので、どうすればよいでしょうか。

この場合、たしかに生産緑地を継続すれば納税猶予が受けられます。都心でも畑の農業投資価格(納税猶予を受ける場合の相続税評価額)は1㎡あたり1,000円未満となります。生産緑地の本来の評価額は宅地としての評価額を基準に計算しますので、農業投資価格はその数百分の一程度になります。よって納税猶予の適用により申告時に納付する相続税が極端に減るケースが多くなります。
ただし生産緑地の場合、通常はそれを相続した相続人が一生その土地で農業を継続しなければならなくなります。途中でやめた場合には猶予された相続税とそれまでの利子税とをあわせて納付しなければならなくなります。

結果として積極的に農業を営むのではなく、納税猶予を受けるためだけに生産緑地を継続するのであれば、Aさんはそのために一生その土地に縛られてしまうことになるわけです。

生産緑地の一部は継続し一部は解除するという方法もおすすめ

その解決策の一つとして、今後の土地の有効活用や土地の売却による現金化を考えて、生産緑地の一部は継続し一部は解除するという方法もおすすめです。解除した部分については、有効活用も売却(現金化)もできます。生産緑地解除後も農地として使っていれば「事業用資産の買換え特例」も適用できます。

また相続開始から3年10カ月以内の売却であれば、「相続税の取得費加算」が適用できます。この場合取得費に加算できる相続税額の計算は、実際の納税額ではなく納税猶予適用前の算出税額をもとにします。つまり実際には納付していない部分についても取得費加算として使うことができるのです。
これらの点をふまえて、Aさんはどれだけの部分について納税猶予を適用するか(生産緑地を続けるか)を考えるべきでしょう。

さて今回は、生産緑地の相続と相続税納税猶予の関係についてご紹介しました。相続は親から子への財産引き継ぎと考えると単純ですが、それにかかる税額や税金の扱い方は、ケースバイケースで様々に入り組んでいます。相続税額を適切にするためにも、相続に関わるお金の問題を避けるためにも、相続の話が持ち上がったら税の専門家へご相談ください。当事務所でも、相続関連のご相談専門機関として「相続手続き支援センター」を立ち上げ、サポートいたしております。

※記事に含まれる法令等の情報は、記事作成時点のものとなります。法令等は随時変わる可能性がありますので、本記事を実務に生かされる際には最寄の税務署か税理士へ確認してください。

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